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刹那の美しき世界独自の撮影法で活動してきた写真家笹尾佳夫さん

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 落ちる水滴に映る一瞬の風景にピントを合わせて写す、といった独特な撮影法などでユニークな写真を撮り続けてきた平塚市南原在住の写真家・笹尾佳夫さん(72)が先月、自身の活動の集大成となるミニ写真集『水滴の中の小宇宙・湘南の海』を制作した。但し同冊子は、ごく親しい知人らに配ろうと印刷された非売品で印刷部数も少なく、世に出回ることはまずない代物だ。そもそも笹尾さんは人に見てもらう為ではなく、ましてや仕事としてでもなく、あくまでも自身の芸術活動として50年以上、「カメラ」を続けてきた。だが昨年癌を患い、闘病生活の中でカメラを置くことを余儀無くされ、「せめてもの記念に」と自費出版した。本紙今週号では、そんな彼のライフワークのごく一部を紹介する。
高度経済成長期、大型トラックの車体を製造する工場に就職し、生まれ育った石川県から平塚市へと移り住んだ。カメラが「舶来」と呼ばれていた頃、当時20歳だった笹尾さんはその魅力に出会う。
 「銀座にはスキヤカメラやカツミ堂、三共カメラなど中古のカメラ屋がいっぱいあって……」「ゼンザブロニカやライカのバルナック型が欲しかったんだけど、最初はハッセルブラッドを月賦で……」など、分かる人には分かるであろう用語が次々と溢れてくる。たとえ分からないとしても生涯を通してカメラを愛してきた、という熱い想いは伝わってくる。その通り、半世紀の年月を掛け、撮り続けてきた。
独自の撮影法へ
 定年前にはライカを9台持っていたというほど、とにかく様々な機材を買っては、多くの写真を撮ることに没頭した。月に2日しか休日が無かった若かりし頃は、土曜の夜に夜行列車で行ってまた夜行列車で月曜の朝に帰ってくるという強行の”山岳写真”や、喫茶店でコーヒーが80円だった当時、1枚撮る毎に100円かかる”水中撮影”などにも手を広げた。だが家庭を持つようになってからは出費のかさまない”スナップ”へと移行していったという。
 さらに時代が変わるにつれ、プライバシーという観点から人にカメラを向けるスナップ撮影が難しくなり、対象を昆虫や鳥へと移した。そして「もっと面白いものを」と追求していく中で生み出したのが”水滴”の撮影法である。
刹那の輝き
 写したい風景の前でカメラを構え、レンズの2~3cm前に水滴を落とし、一瞬の幻想的な世界を切り取る。落ちるタイミングはもちろん風景と水滴、さらに水滴とレンズという二重のピント合わせ、太陽光の角度、手ぶれ、無風……など、高い技術と厳しい条件が求められ、1枚1枚が奇跡の瞬間だ。だが「ものすごく神経使うんだ。疲れて汗びっしょりになる」と言うほど精神的にも肉体的にもきついこの撮影法は、点滴を打って生活している今の笹尾さんにとっては困難なものとなった。
 だから「せめてもの記念に」と写真集を作った。世には出ない。もちろん写真展などを開くつもりも毛頭ない。元々人に見てもらいたくて撮ってきたわけではないのだから。ただ、親戚や知人にだけは知ってもらおうと配布した。自分だけが覗いていた、美しい世界を。
【写真TOP】
愛機のライカM9を持つ笹尾さん
【写真下左から】
鎌倉の大仏/要法寺と蓮の花/鈴川の鯉のぼり/総合公園の/自費出版した写真集

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