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「あくまでも趣味」の工芸将棋駒制作の技を磨き続ける三浦日出男さん

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 光沢があり肌触りが良く、一見、木とは思えないほど艶がある、高級木材の柘植で作られた将棋駒。毎年、七夕まつり期間中に開催される「ひらつか七夕将棋大会」の「こども大会」で、2年前から入賞者に贈呈されている手作りの駒がある。大会に参加するプロ棋士も欲しがるというこの駒は、平塚市在住の三浦日出男さん(79)が1つ1つ丁寧に作り、寄贈しているもの。今月4日には、この功績を讃えるとして日本将棋連盟(谷川浩司会長)より表彰されたが、三浦さんは駒作りで生計を立てている駒職人ではない。あくまでも趣味の世界として、人知れず約40年、美しい工芸品を作り続けてきた。今週はそんな「囲碁のまち・ひらつか」の、隠れた将棋駒の名工をご紹介。
 趣味だからこそ、採算を度外視した作品を作ることができる。商品ではないからこそ、納期や仕上がりに囚われず、好きな時に好きなだけ作業し、贅沢に素材の良い部分だけを使って「美」を追求できる。その完成品については、賞状と記念品を手渡した日将連平塚支部長の佐々木重輝さんも「値段さえつけられていませんが、ものすごく高価なもの。大人のプロ棋士が欲しがるレベルなんですよ。『三浦さんの駒は素晴らしい』って」と評価するほどだ。
ライフワーク
 受賞にあたり、北海道出身者らしい柔らかいイントネーションで「なーんだか、えらいことになっちゃってまー」と恐縮がる三浦さん。作り始めたのは約40年前のこと。平塚市内の企業で勤務していた当時に将棋を始め、駒を買おうと思い「どうせ買うなら良いものを」と、駒師として名高い金井静山氏(1904-1991)を訪ねたという。だが「素人には作りません」と門前払い。ただ「木地を作ったら作ってあげる」とのことで、自ら御蔵島(東京都)から木材を取り寄せ購入し、作ってみた。いざ作ってみると木の美しさに魅了され、趣味は一転、「指す」方から「作る」方に。ここから、人生をかけたライフワークが始まった。
 暇さえあれば静山氏を訪ね、技術を学んだ。木目の方向や色、柄など、こだわり続けておよそ40年。「400~500組は作ったかなあ」と数え切れないほどの駒を作ってきたが、売り物ではないためその多くは今も数百という単位で自宅に置いてある。「悪い趣味なんだわー。えらい金使って、家の中も汚くしちゃうし、ろくなことないよー」と謙遜するが、ひたむきに確実に、自らの技術を磨き上げてきた。そんな中で「死」を意識する人生の転機が訪れた。
予測不能の面白さ
 3年前に患った大腸ガン。当時は死を覚悟したというが、手術は成功、転移もなく一命を取り留めた。「生きて帰ってこられた感謝じゃないけど、これをきっかけに何かしようと思ってね」と、日将連平塚支部・佐々木さんに連絡し、贈呈の提案をしたところ快諾。寄贈を始めた2年前の大会では、優勝して駒を受け取った子どもが父親を連れて三浦さん宅へお礼に来たとのことで、これに感激し「そんなに喜んでもらえるならば今後も」と、贈呈枠を3位入賞者まで拡大し昨年、今年と続けてきた。
 「大人に出しても『こんなものいらん』と言われるよ。でも、子どもたちにおもちゃとして使ってもらえれば嬉しい。人にあげて使ってもらえるなら、俺が死んでも何組かは残るでしょう。だから、子どもたちが喜んで持っていってくれる内、生きている内は出すわ」
 駒作りは、「どんな木目が出てくるか、切るまで分からないからこそ、面白い」と言う三浦さん。初段は取得したものの駒作りと出会って以降、将棋を一切指さなくなった自分がまさか、日将連から感謝状を贈られる日が来るとは思いも寄らなかった。病気も含め、人生は予想外の結果で溢れていると自らの身を持って体感した。どんな結末が待っているか分からないからこそ、面白い。ちなみに三浦さんは囲碁が好き。これについては今も楽しんで打っているという。
【写真4】日将連の佐々木さん(左)と三浦さん

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