
不労所得でも無い限り、ビジネスでない芸術活動だけで生きていくことは難しい現代社会。たとえ個展で作品が売れるにしろ画廊代やマージンなどの負担も大きく頻繁には開催できぬもの。美大生などは特に「社会生活を優先させ創作活動から離れて正規雇用の職に就くか、非正規雇用でも創作活動に比重を置き続けるか」といった選択肢に迫られる。営利目的第一ではないが、作品で収入も得つつ表現活動を続けたい──。そんな葛藤を解決する場として今月19日、平塚市内にオープンするのが、地元出身の若者を中心に作られたシェアルーム「1761studio」だ。
美容院だった店舗を改装して作られた同所は、現在5人の若者が参加する「共同のアトリエ+ギャラリー」。ここでは創作活動や作品展示、ワークショップが行われる。道行く人はガラス張りから覗いても良し、気軽に中に入って見学しても良し、もちろん作品購入も可能である。
この場所の発起人となったのは平塚市出身で大磯町在住の岩﨑夏子さん(29)。多摩美術大学、大学院で日本画を学び、現在は県内の高校で美術教員として働く傍ら、創作活動・発表の場を模索する中で、ベルリン芸術大学留学中に知った、パリの「スクワット」(若手アーティストらが創作・発表の場として空き家を占拠する活動)をヒントに今回のアイディアを発想したという。そんな空間を作りたい、とアート仲間に呼びかけたところ賛同が得られ、5人で立ち上げることとなった。
アートで繋がるシェアルーム
現在参加しているのは、ロートアイアン職人として鉄製品を作る傍ら造形作品を制作する市内在住の髙橋健太朗さん(29)。多摩美大で日本画を学び、現在は和紙、墨、箔、岩絵の具など日本の伝統的画材で抽象絵画作品を制作する坂下言葉さん(28)。東京藝術大学、大学院で工芸を専攻し、木彫りや乾漆、蒔絵などの技法で漆芸作品を制作する西澤絵理子さん。自由詩の創作に取り組む市内在住の中学校教員「Ri」(ペンネーム)さん(25)と多種多様なメンバー。
そしてそれぞれが知恵と、技術と、家賃を出し合い、新たな形のシェアルームが誕生した。
まずは、やってみる
「個人ではできないけれど、集まればできることがある」と岩﨑さん。想いとしては、「既製品には無い、一点物が持つ価値や深み。そういった、生活を豊かにするアートの魅力を提案をしていきたい」。だが「実際いつまで続けられるか分かりません」と現実も見る。当然、作品販売やワークショップが不振であれば継続できないのは自明の理。ただ「まずは、やってみようと。前例が無いので、壮大な実験ですね」と一歩を踏み出した。
これまでにも都内を中心に積極的に個展を開いてきた彼女だが、「アートに興味のある人たちが来てくれる画廊は画廊の良さがある。その一方で、ここは多くの人が行き交う街中にあり、通りに面したガラス張りで誰からも見られる環境にあるので、アートに興味のない人たちにも存在を知ってもらえる貴重な場所」と新たな発信の場に期待している。なお通常のオープン日時は不定だが、在室時はいつでも入場可能。「誰でもウェルカム」とのことだ。
1761studio(袖ケ浜17-60)
「Opening Exhibition」◇9/19(土)~23(水)11時~19時◇問い合わせ=1761studio@gmail.com
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