
波の動きによって発電する波力発電。再生可能エネルギーのうち、太陽光や風力に比べると実用化が遅れており、国内では数カ所で実証実験が進められている段階である。だが、四方を海に囲まれている日本では大きな可能性を持つエネルギー源の1つ。この波力発電について、平塚で新たに実証実験を始めようと、企業や大学などが参加する研究会が来春、発足することになった。
研究会の準備を進めているのは、東京大学生産技術研究所の林研究室。同研究室では、比較的低コストで早期に実現可能な波力発電システム実現を目指し、金属製の「波受板」で受けた波の力で油圧の流れを作り発電機を回す方式を開発。実験の第1ステージとして現在、岩手県久慈市での実験の準備を進めている。同所には来年夏、製作中の試作機1台が設置される予定だ。
ただ、東京から遠い岩手では発電機のメンテナンスや保守も手間がかかる。また、波力発電への理解を深めるためには、より多くの人に見てもらうことも必要である。さらに同大学の「平塚沖総合実験タワー」で記録している波のデータが発電量のコントロールに利用できることもあり、東京から近い平塚が第2ステージの場所として選ばれた。
平塚の海で
平塚での実験では、久慈でのデータを元に発電機を改良し、平成31年度以降3台同時に設置する。これにより住宅100軒弱分の使用電力にあたる150kwの発電を目指すという。波力をはじめ自然エネルギーは、気象条件による変動が大きいため、一定の電力を効率良く出すよう制御することが大きな課題。そのため今回の実験は、データを取りながら制御システムを改善していくことが目的となる。設置場所は平塚新港の防波堤付近。波受板も静かに動くことから、同研究室では海中の生物や漁業への影響はほとんどないと予測している。平塚市漁業協同組合の理解も得られており、発電した電力は同組合で使用する予定だという。
同研究室の永田隆一特任研究員は「こうした事例が増えれば、現在非常に複雑な国や電力会社との手続きも簡略化され、将来的には民間企業も参入しやすくなるのではないか」と実験の意義を語る。
地元の協力を
同研究室では、平塚での実験に地元の協力も得たいと「波力発電研究会(仮称)」に参加する企業・大学の募集を開始。発電機の中核部品の製造企業など、すでに数社の参加が決まっているというが、地域の企業も募集中だ。
永田研究員は「平塚市内の企業は色々な技術を持っているし、例えば(発電機を覆う)構造物を建設できる企業は多いでしょう。波力発電に興味のある市内外の企業、大学に参加してもらい、どう連携していけるかを探りたい」としている。活動期間は来年4月から10年間で、月1回の会合のほか、来年夏に1号機を設置する久慈市への見学会も予定している。またいずれは、平塚市内の小中学校への出張授業など地元に対してどのような貢献ができるか、といった点についても研究会で検討していきたいという。
数十年後の未来へ
使用する発電機は構造がシンプルで規模も小さく、中小企業に向いた技術とのこと。そのため日本各地で多くの場所に設置可能で、使う場所で電力を生み出す「電力の地産地消」が可能になるという。さらに、既存の部品を使うため専用の発電機を開発するよりもコストが抑えられることから、永田研究員は「日本同様に島の多い東南アジアなどへも展開できたら」と、海外進出も視野に入れている。
同じ海洋エネルギーを使う潮力発電で日本は出遅れているものの、波力発電については、まだ世界で優位に立てるチャンスはあるという。波力発電が全国へ波及し、数十年後には新たな再生可能エネルギーとして各地で利用されているか。大きな波の第一波が平塚から始まる。
(画像は全て林研究室提供)
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