
大磯町の左義長が今、存続の危機にあるという。左義長とは、大磯の下町で古くから毎年の小正月に行われてきた壮大な火祭りのこと。この、国の重要無形民俗文化財にも指定されている大磯の伝統文化が今、運営費などの理由から、長い歴史の中で岐路に立たされている。そして同時に、「何とか続けていこう」と、様々な支援活動が多方面から発生している。
漁師町だった海岸沿いの地域で約400年前、当時貴重な労働力であった子どもたちの無病息災を願って始められたと伝わる左義長。全体の流れとしては、前年12月初旬に子どもたちが家々を巡る「一番息子」から始まり、祭り前の数日間に子どもたちがオカリヤ(御仮屋)でオカリコ(御仮籠)などをする「七所参り」、そして祭り当日、9基のサイト(斎灯)を燃やす「セエトバレエ」や褌一丁の若い衆が海に入っていく「ヤンナゴッコ」といった行事でクライマックスを迎える。
これら一連の行事で形作られる左義長は、地域と密接に結びつき、温かさもあり華やかさもある祭りだが、主催する大磯町左義長保存会(芦川博昭会長)によれば、「徐々に衰退してきてはいましたが、いよいよ窮地に追い込まれてきたという状態」を迎えている。
継承されるか、消滅するか
衰退の要因は1つ、言わずもがなの「運営費」だ。大磯の左義長はサイト制作などで費用が結構かかるのである。
元は漁師町の、漁師中心に開催されてきた祭りであり、実際に数十年前までは漁師が沢山いたという。そして漁師らの持ち出しに加え、さらに地域からの「花代」といった祝い金の寄付も多く、運営には支障がなかったそう。だが高齢化、人口減少社会の時代を迎え、漁師は激減、花代も減少。地域でつくる保存会だけではまかないきれず、だんだん先細ってきていよいよ窮地に陥った、という実情だ。
昨年4月、保存会の会長に就任した芦川さん(53)は「就任時点で保存会の通帳には0円。もう地域だけでやっていくのは限界で、地域の人たちは万歳(お手上げ)しかけていたんです」と言う。
だが、文化財にも指定されているこの祭り、そう簡単にやめるわけにいかない。「続けていかねば」
オール大磯で立ち上がる
早くから危機感を抱いていた酒屋の芦川さんは、町内の酒販店有志の協力を募り、「購入すると一部が運営費に寄付される日本酒」の販売を3年前から始めた。そして、そういった「左義長の現状」は人づてに広がり、想いを同じくする有志が様々な方面で立ち上がった。
例えば、町内でボランティア活動などに協力している「NPO法人大磯だいすき倶楽部」は、収益金を寄付する「大磯左義長 御守木札」を制作。また、芦川さんを団長に東光院の副住職・大澤暁空さんらでつくる「左義長応縁団」では、左義長の由来やマップなどを掲載したPRパンフレットを印刷した。そのほか町内の福祉施設からは、手作りのしめ縄飾りの売上金が寄附され、さらには町立大磯中学校からも文化祭の売上金が寄贈された。
「おかげさまで善意の心は広がり、町外に住む人も日本酒を『ケース買い』して助けてくれました」と芦川さん。「もちろん金額の大小ではありません。色んな多くの人が、見捨てないで一生懸命この祭りを大事にしてくれている。『町の宝物として何とかしようよ』って心配してくれる。そういう気持ちが本当に嬉しい」
大磯の下町で400年続く、子どもの健やかな成長を願う伝統行事。後世へ伝承できるか、ここで途切れるか。今我々は、郷土史のターニングポイントにいる。
平成28年の左義長は1月11日(月・祝)、北浜海岸で。点火は18時30分。
清酒「大磯左義長」(1,240円)
販売協力店=大磯三河屋酒店(高麗)、関野商店(長者町)、青木酒店(山王町)、飯島酒店(北下町)、和泉常(南本町)、芦川酒店(南下町)、久保田酒店(台町)、地場屋ほっこり(大磯駅前)、ファミリーマート大磯店(神明町)、戸塚正商店(西小磯)、日日食堂(山王町)
販売期間=平成28年1月11日まで
問い合わせ=大磯町左義長保存会
☎︎61-0411(芦川さん)
【写真TOP】
セエトバレエ
【写真下左から】
一番息子/オカリコ/ヤンナゴッコ/清酒「大磯左義長」
(清酒以外の写真は大澤暁空さん提供)
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