
いじめを理由に自ら命を断つ子どもが後を絶たない。平成25年にはいじめ防止対策推進法も制定され、学校や教育委員会はいじめをなくそうと様々な対策を取っているが、原因は複雑で効果を上げるのはなかなか難しいという。そんな中、生徒同士が支え合っていじめを未然に防ごうという「スクール・バディ」活動が、平塚市立大住中学校(栗木雄剛校長)で昨年度から行われている。教師やスクールカウンセラーといった大人によるいじめ対策ではなく、子どもが主体的に活動するこの珍しい取り組みについて、生徒や教諭に話を聞いた。
スクール・バディ活動とは、女性や子どもへの暴力防止に取り組む藤沢市の特定非営利活動法人・湘南DVサポートセンターが開発したいじめ防止プログラム。同センターは、柔軟な10代のうちにいじめについて自分で考え気付きながら、内面から変わることでいじめを未然に防ごうと、11年前にこのプログラムを開発した。東京都世田谷区の全中学校や藤沢市では19校中12校など、既に県内や都内をはじめとした小中学校約80校で実施されている。
意識が変わった生徒も
大住中学校では、この取り組みを知った栗木校長が「いじめはしょうがないという意識が一部の生徒の中にあり、いじめに対する関心が低いと感じていた」ため、昨年度からこの活動に取り組むことにしたという。
まず9月から10月にかけ全生徒が講演会や各クラスでのワークショップで、いじめる人の気持ちを考えたり、いじめには加害者と被害者、傍観者がいて「クラスの誰もが関わっている」ことを学んだりした。
その後、いじめ防止活動を行う「スクール・バディ」を募集。今年度も同様のプログラムを実施し、現在は1、2年生の25人がバディとして活動中だ。中にはいじめのような扱いを受けたことがあり「誰かの力になれたら」と手を挙げた子や、以前からいじめに関心があった子もいるが、「きっかけは先生から声をかけられたから」という生徒が多い。
バディの活動
集まったバディはバディルームの設置とDVD・CM制作を決めた。
バディルームでは、放課後月2回バディ2、3人が交替で待機し、生徒からの相談を受ける。今のところまだ相談はないが、担当する同校の平田裕美子教諭は、「バディがいて相談できる体制が学校にあるということが大事だと思う」と、バディの存在が子供たちの安心感に繋がると期待している。
また活動をPRするためのドラマDVDは、2年生の女子2人が脚本を担当。部活での意見の対立から1人が仲間はずれにされるという、実際にありそうなあらすじにしたそう。仲間はずれにされる役を演じた生徒は「いじめられる人の気持ちが少し分かった」と話した。撮影も生徒が行ったこのDVDは昨年11月の文化祭で披露された。
こうしたスクール・バディ活動を行う中で、関心があまり高くなかった生徒もいじめに対する考え方が変わってきた。バディの1人は、悪ふざけをしている人を険悪にならずにうまく止められる勇気を出せるようになったという。また級友の少しの変化にも敏感になり「ちょっといつもと違う」と気付いた時に友達に相談したという生徒や、クラスで孤立気味の人がいると「バディだから、どうしたらいいか気になる」と先生に相談に来た生徒もいる。
平田教諭は、「『傍観者でいてはいけない』と生徒のいじめに対する意識が高まった」と考えている。
効果が出るには時間が必要
このような変化が学校全体のいじめ防止にどう繋がるか。湘南DVサポートセンターの瀧田信之代表は、「今のいじめはLINEを使うなど分かりにくく、気付けるのは生徒同士。それを信頼する大人につないでいくのがバディの役割」だと考えている。これまで実施した学校では「これはいじめじゃないか」という声を上げる子も増えて、校内の風通しが良くなったという。「1年でがらっと変わることはありません。3、4年かかって定着し『いじめを許さない』という空気を作っていく。体質を改善する漢方薬と同じです」と、活動には時間が必要だと話す。
実際にバディ活動をする子どもたち自身は「いじめはあってほしくない」という気持ちを強く持っている。その思いを原動力にするこの取り組みを長く続けるには、大人が、勇気を出した子どもの声をしっかり聞き取ることが必要である。
【写真TOP】
大住中のスクール・バディのみなさん
【写真下】
バディルームの案内/バディルームの様子
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