
明治から大正にかけ政財界の要人や資産家が別荘・別邸を構えた大磯町。JR大磯駅前にある「大磯駅前洋館」(旧木下家別邸)もその一つである。建設から100年以上経った今もなお現存し、モダンな佇まいを残すこの建物について、どこまでご存知だろうか。
貿易商・木下建平氏の別邸として大正元年(1912年)に竣工した同洋館。敷地が三角形であることから、三角屋敷という名でも知られた建物は、平成に入ってからフレンチやイタリアンのレストランとして使われていた。
しかし、洋館の敷地が競売にかけられようとしていたことから、歴史的な建物を保存するため平成22年に大磯町が土地を購入。平成24年には町内で初めて「国登録有形文化財」の登録を受け、続いて景観法に基づく「景観重要建造物」に指定、現在建物は町が選定した民間業者の運営するイタリアンレストラン・結婚式場「大磯迎賓館」として利用されている。
最古のツーバイフォー住宅
この建物の歴史的な価値はどこにあるのだろうか。同洋館が建てられた時期、町内には多くの洋館があったが、大正12年の関東大震災でほとんど倒壊したという。その際残った建物がこの洋館であり、1世紀以上前の木造洋風建築が現存する貴重なケースと言える。
さらに、「景観重要建造物」の指定に関わる大磯町まちづくり審議会の委員を務める一級建築士・山口明宏さんによれば、同洋館はアメリカで生まれたツーバイフォー工法(壁で建物を支える工法)による国内の住宅の中で、国産木材を使用した最も古い建物という。
また設計者はよく分かっていなかったが、最近の研究により、アメリカで国宝に指定されたパナマホテルを設計した小笹三郎ではないかと推測されているという。
外観には当時流行のスタイルが取り入れられ、切妻造の屋根にドーマー窓、正面にはベイウィンドウ(出窓)。内部には現在6つの洋室とサンルーム、それに近年になって増築された厨房やホールなどが設けられている。海が望めるサンルームのステンドグラスや、アカンサスという花の模様で装飾されたドアノブは、山口さんによれば竣工当時のものと考えられるという。また長い間に増改築を重ねてきたが、他の新しいステンドグラスや照明も大正ロマンの雰囲気に合わせたものが使われている。
より愛される建物に
こうした建物の魅力を知ってほしいと、山口さんも参加する市民活動団体「大磯まちづくり会議」は今年3月、町の補助金を活用してパンフレット「大磯建物語」を作成した。町観光協会などで配布されている他、町内の小中学校にも配られ、幅広く周知することで数少なくなった歴史的な建物の保存に繋げたいとしている。また洋館を会場に建物をテーマとする講演会も年に数回開かれ、山口さんは古い建物への関心が強まっていると感じるという。
さらに町は、同洋館の雰囲気に合わせ、装飾の施された鉄製のロートアイアンの看板を設置することを決め、現在デザインを募集している。期間は来月31日まで。詳細は町のHPで確認を。
◇大磯町産業観光課☎61-4100
◇大磯迎賓館☎︎050-3385-0013
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