
大磯町内には、昔の面影を感じられる松並木が残る。元々は江戸時代に東海道を整備する際に植えられたものであり、その下を参勤交代の武士や旅人などが行き交った。国道1号線沿いの町立大磯中学校から旧伊藤博文邸(滄浪閣)にかけては見上げるほどの大きな松がそびえると共に、国道から入った山王町の旧道にも風情ある松が残る。この風景はどのように保たれているのだろうか。
化粧坂から線路を挟み国道1号線に至る旧道は、今では住宅が建ち並び車の往来が少ない静かな通りとなっている。しかし、東海道五十三次で大磯は日本橋から数えて8番目の宿場であり、江戸の昔は多くの人で賑わった。その人々を日射しや風雨から守ったのが松並木である。
ただここは「松並木」と言いながらも、昭和40年代以降のマツクイムシによる被害のため松が激減した(大磯町郷土資料館発行「なつかしの風景Ⅲ史跡と名勝」より)。その後平成に入ってからも台風で倒れたり枯れたりしたため、大きな松の数は減っており現在は200本あまりに。代わりにエノキや桜、今の時期に濃いピンクの花を付けるサザンカなどの木もあり、歩く人の目を楽しませている。途中には旅程の目印となる一里塚があった場所を示す看板も立てられ、街道の面影を残す。
松の生えている敷地の管理は、この通りが町道であるため町が担当する。2年に1度の剪定の他、マツクイムシ対策として幹に薬剤を注入したり、根の付近に炭を埋めて松枯れを防止するなどの保全も行っている。
そして美化のため活動を続けているのは、沿道に住む住民が中心となって組織する「山王町松並木敷整美の会」。自身も50年近く道沿いに住み、5年前の設立当初から会長を務める安永一夫さん(74)は「きれいにして訪れる人に少しでも気持ちよく歩いてもらえれば」と話し、現在は月に1度、会員10数人が集まって草取り、清掃、秋には落ち葉の掃除などに取り組んでいる。
通りを活用する方策
さらにこの通りを広く知ってもらい、訪れる機会を増やそうと毎年11月に開かれているのが「宿場まつり」。宿場町の賑わいが再現され、普段静かなこの通りに人が溢れる。このまつりに携わる1人で、子どもの頃からこの界隈に住む石井晴夫さん(67)は「松の木は馴染み深い風景で愛着を感じているので、皆さんに知ってもらうと共に、より歩きやすい環境にできたら」と思いを語っていた。
清掃活動を続ける安永さんも「観光客の中には旧道に気がつかず1号線をそのまま行ってしまう人もいる」と言い、小さくてもいいから旧道の入口に看板を立てるなどすれば、町内を歩いて観光する人に分かりやすくなるのではと考えている。
貴重な財産を守るために
設立以来5年あまり活動してきた「整美の会」だが、会員の高齢化が進み人数が減ってきているという。安永さんは「きれいにしないと人は来ないが、高齢になってくると広い場所を清掃するのは難しくなる。落ち葉を集めてくれる人が1人でも増えればありがたい」と話している。
静かな通りを歩けば、暮らしの中に息づく歴史を感じることができる。その魅力を広く知ってもらうには、こうした取り組みがこれからも続いて行く必要がある。
◇同会の清掃は毎月第3木曜日。今月は15日(木)10時~
集合場所は線路下の地下道入り口そばの「ポケットパーク」
【写真TOP】
現在の山王町松並木の様子、
【写真下】
昭和45年頃の松並木(提供=安永さん)/「整美の会」の安永さん/一里塚を示す看板
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