
農薬を使わない野菜作りや烏骨鶏の飼育を行う「まるしん農園」(大磯町虫窪)の二宮正美さん(59)。病気をきっかけとして安心な野菜を作りたいと奮闘しつつ、ゆくゆくは病気を抱える子どもたちにも野菜に触れる体験をしてほしいと願う正美さんと、農園暮らしの体験を通じて人と人とを繋げたいと考える娘の祐子さん(35)に話を聞いた。
サラリーマンだった二宮さんは、13年前に父親が亡くなったのを機に実家の農業を引き継いだ。現在、みかんや季節の野菜に加えキヌアや古代米の一種・黒米を約3万㎡の畑と田んぼで育てている。みかん畑では3年ほど前まで農薬を使っていたが、現在はどの場所でも使っていない。代わりに手で虫を取り、薄めたにがりを野菜にかけ病気の発生を抑えようとしている。
これまで肥料を使わずなるべく手をかけない自然農法や有機栽培に取り組んできたが、肥料を自分で作りたいと烏骨鶏の飼育にも挑戦している。鶏ふんから作った堆肥で畑の野菜を育て、その中で出荷できないものや米の籾をおからと混ぜ、烏骨鶏のエサにする。
畑を見ると、野菜には青虫とそれをエサにするヒヨドリに食べられ、多くの穴が開いている。出荷できるものは一部に過ぎず、ロスが多く「効率が悪い」と言われることもあるそうで、実際「全く赤字です」と二宮さんも苦笑する。
きっかけは病気
無農薬に力を入れる大きな転機となったのは、3年前に大病を患いその後手術を受けたことだという。医師から食生活について注意を受け、嫌いだった野菜を摂らざるを得なくなった。かなりの量の薬をのむため「食べるなら安心して食べられるものを」と思った二宮さん。少しずつ始めていた無農薬野菜の栽培と販路の拡大に、強い意欲を持って取り組むようになった。採算が合わなくても「今、自分にとって一番大事なのは健康」と語る。自身は病気のため力のいる仕事は難しいことから、手伝ってくれる10人ほどの仲間と共に農作業を行っている。
開かれた農園へ
次にやりたいのは、農業体験できる場を作ること。訪れた人が収穫した野菜と自給した小麦粉でピザを作って食べるというプランを持ち、そのためのピザ窯はすでに自宅裏に完成している。二宮さんの中には、子どもたちに遊びながら野菜に触れてもらって時にはそのまま食べても構わない、特に自分のように病気を抱える子どもにそうした体験をしてもらえたらとの思いがある。
そして娘の祐子さんは訪れた人が農作業をして農園の恵みを生かした料理を食べ、宿泊もできるようにしたいと考えている。これまで知人から紹介された各地の生産者を訪ねたり、おいしいと思った店で料理を教えてもらったりと「人と繋がる」中で様々な体験をしてきた。「今後は自分がいろんな人と人を繋げていきたい」と考え、現在そのための場所を探している。
ピザ窯のある斜面からは海が望める。自分で収穫した野菜をのせたピザと祐子さんの料理によってここで頬張れば、野菜嫌いの子どももきっと食べられるようになる。そんな日が待ち遠しくなるような、気持ちの良い風景が広がっている。
◇問い合わせ=まるしん農園☎080-6659-3391
烏骨鶏の卵や農産物はJA湘南「あさつゆ広場」や大磯駅前の「地場屋ほっこり」などで販売している。
【写真TOP】収穫したばかりの野菜を手に取る二宮さん
【写真下】
虫や鳥に食べられてしまった野菜/裏山のピザ窯/娘の祐子さん/野菜の味を生かし丁寧に作られた料理
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