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Jリーグ開幕直前!スペシャルインタビュー湘南ベルマーレ 曺貴裁監督×水谷尚人社長が目指すクラブのあり方

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 いよいよ今月26日、J2リーグ2017シーズンが開幕する。開幕を直前に控えた今号では湘南ベルマーレ曺貴裁監督と水谷尚人代表取締役社長の特別インタビューを敢行。クラブとチームという異なる立場でトップに立つ2人から目指すクラブの姿を探る。
── まずは水谷社長、本紙初登場なので簡単に自己紹介をお願いします。ベルマーレに携わるようになったのはいつからですか?
水谷:2002年の秋ですね。強化部長としてです。社長に就任したのが15年の12月27日です。
── もともとベルマーレとは関わりはあったんですか?
水谷:初めは何もないです。でも2003年から平塚に住んでいて人生で一番長く住むまちになりましたね。
── そんな水谷社長と曺監督の出会いについて教えてください。
:僕が早稲田大学に入った時に2つ上の先輩にいました。
── 当時の記憶とかは。
水谷:全くないです(笑)1個あるとすれば早大サッカー部でセレクションをした時に奥野僚右という鹿島でCBやってた選手と2人で来たのは覚えています。で、奥野の方が全然上手かった。でも奥野は2浪してしまったんですよ。
── 大倉前社長は曺監督の1歳下でしたね。そのあたりの世代が集まっていますね。
:そうですね。
水谷:今度アカデミーのサブダイレクターになる人も曺の同期だね。
── 曺監督も水谷社長の記憶はないですか?
:え?(笑)いやもう、サッカーの練習なんてやってる場合じゃないっていうような1年間(笑)グラウンド整備とかサッカー以外にやることが多すぎて。
── いわゆる上下関係の下積みがあるわけですね。
水谷:立派だなと思うのは、今、帝京大学ラグビー部は4年生がグランド整備や片付けをするという。1年生は慣れない環境に来たからラグビーに専念させてやりたいっていう、立派な話だと思いますよ。実際強いしね。
── 昨年の振り返りをお願いしたいと思います。率直にどのように感じてますか?
:責任はすごく感じてます。自分たちがイメージしてきた「選手が成長すると同時にチームが強くなっていく」っていうのが理想以上に形になってきていた。これからJを目指すチームも、生き生きと躍動感のあるサッカーをやれば、ビッグクラブに対抗まではできないけど追随ぐらいはできるんじゃないかというのを1つの形として出せたと思ってました。
だけど僕が思っていた以上に、選手の成長とか環境の変化にクラブ全体が追いつけなくなってた。現実としてベルマーレというクラブが予想していた以上にいろんなことが短期的に起きた。試合に多く出ていた選手がそのタイミングで出ていくなんて僕だって予想していないし、クラブだってしていない。今の日本の制度ではそうならざるを得ない。というのをなんとなくはわかってたけど現実的にそれは予想以上の変化だったなと思います。
── ベルマーレのサッカーが湘南スタイルと言われてサッカー界全体から注目される。そういったものについていけなかった?
:2015年はFUTURE2015っていうビジョン、キャプテンをアカデミー出身から出す、登録選手の半分、レギュラーの半分を育成からというのがほぼ達成されたんですよ。古林将太、遠藤航、菊池大介、それから大卒で獲った菊地俊介、三竿雄斗、永木亮太。もう外からの選手なんていないわけですよ。それでJ1で残留は果たしましたけどそのあとが全然作れていなかった。
── それが加速度的に訪れてしまった。
:必死だったからね2014も2015も。勝ち点101で独走でっていうけどもう必死に走って来て。でもあの年も小さな変化は乗り越えて来たから当然2016も乗り越えられるだろうと思った。けどそんな甘くはなかった。
水谷:正直フロントもふわふわしてたんだよね。2014〜2015はいい時期で、黒字黒字で最高益あげて「すごいじゃんベルマーレ」と誰にでも言われる。それはしょうがないんだけどでもやっぱり謙虚にやらなきゃいけなくて。第三者の目で自分が置かれてる立ち位置を認識しなきゃいけないなと思っています。
── 水谷さんは社長就任1年目での降格でした。
水谷:強化部長をやってるときもFリーグの社長やってるときもだいたい勝ってないから勝ち運がないと思ってます(笑)。ただ社長として就任したとき、開幕前にフロントスタッフに「なんとなく緊張感ないんじゃないの?」というのは言ったことがあって。それと「おせっかいになったほうがいいよ」という話をしたんですよ。隣に座ってるんだから隣のやつのことを気にかけなよと。曺なんか偉いものでよくフロントに顔だして声をかけている。そういう状態じゃないとこの20人ぐらいのスタッフで運営しているクラブはダメだと思う。僕ももっと選手と話した方がいいかなと思っていて。そのおせっかいさが足りなかったなと思ってるので今年は話したいですね。
── よりフロントとチームが一体となって、ということですね。
水谷:他クラブに比べたら全然一体だと思うけどね。去年の終わりに曺はフロントとアカデミーのスタッフを集めて湘南スタイルの講演をしている。こういうことをするクラブはないと思うし、すごく良い講演だったし、そういうのをどんどんやっていきたい。
── 曺さんのビジョンを共有する、という内容ですか?
:僕のビジョンというか湘南スタイルをかな。「カウンターでみんなで走って」という以前に前提の話が色々あるからもっと土台の部分とか根本の部分とか「僕はこう考えている」というのを。我々ベルマーレは何が強くて何が弱いのかちゃんと認識する。勝った負けただけで語るのではなくてアカデミーのコーチもフロントもみんなで成長してチームを強くする、大きくすることによってまた可能性が広がっていく。そういう発想を持ってやりましょうという話をしました。
── 2年前にインタビューさせていただいた際に「湘南のサッカーを『お金を払ってまた見に来よう』と思ってもらう」のが証明だ、というような話をしていますがこういった考えは変わっていないですか?
:全然一緒ですよ。サッカーの監督とかベルマーレって社会の中の一部だから。そんな土日にわざわざお金を払ってわざわざ行くものがつまらなかったら誰も来ないですからね。
── その2015年シーズン、証明できたという感覚はありますか?
:それは自分ではよくわからない。
── 第三者が判断してくれればいいよ、ということですか?
:僕が証明と言ったのは自分たちがJ1でもこういうサッカーを繰り広げてやれるんだというのを見せようという話で。結果的に8位で終わったことが証明だったのかもしれない。でもそのことで変革を迫られて自分たちの首を締めた部分もあるかもしれない。もしかしたら2015年にもっと選手を入れ替えた方がよかったかもしれない。そういった考え方を監督としてサポーターの人たちと話する機会は持たなければいけないと思っています。俺も監督としてそういう選手がでてきたら今度はチームに残す以外のことも考えて頭を切り替えていかないと。当時は「絶対必要なんで残してください」しか思わなかった。
── 監督の中でも考え方がシフトした?
:世界の流れとか世の中の常識みたいなところでいうと湘南が育てた選手をビッグクラブが買っていくようなことがフェアじゃないみたいな風潮がありますよね。でもそれこそがフェアで。ビッグクラブが小さいクラブの選手を獲得するのはフェア以外の何物でもない。で、その対価は移籍金をもらうということじゃないですか。そういう準備をしておかないといけない。頭の中では考えなければいけないのはわかっていたけど、せっかくこれだけ自前の選手で成長したのにもったいないと感じていた。でも今の流れなら受け入れられる。
水谷:対価については僕らがやらなければいけない。いくらの選手に仕上げていくのかという考えがマネジメントする側に必要。今のスペインとかもう少し精神性が高くて、要は育ててくれたチームに対して、「また育ててね」という意味合いでお金を払うということが“魂”としてある。
:育成ってそのクラブが独自で育成しているんだけど、いずれ世の中にでていく商品だという発想をどのチームの監督もクラブもみんな持った方がいいように感じています。
── 新体制発表会で掲げたSPRINT for 2025はまさにそんな話でした。ACLに出るチームに、若い選手に選ばれるチームになるために何をするべきでしょう?
水谷:今年のいい例って柏から来てくれている秋野央樹。試合した相手が関心を持って来てくれるというのは非常に大きい。
── 指導者・スカウトの充実、という部分はどうお考えですか?
水谷:指導者にはサッカーを教えるだけではなく、人としてちゃんと接することができる人材がもっと必要だと思っています。それは子どもたち、若い選手だけではなくてその親ともちゃんと会話ができる。そういう人間が必要だと思っています。もう1つがスカウト。若年層のスカウトはちゃんとやってかなきゃいけない。F・マリノスさんなんかこのエリアによく来てますからね。それも含めてアカデミーのサブダイレクターも無い予算の中で来てもらいました。そこは充実させたい。
── 実になってくるのはどれくらい後でしょう?
水谷:結構時間はかかると思いますよ。やり続けないことには何もわからないですし。
── 2025っていう数字には裏付けはあるんですか?
水谷:トーマス・シャーフとかオットー・レーハーゲルは14年間1つのところで監督をやってるんです(ともに元ヴェルダー・ブレーメン監督)。曺が監督になって今年6年目で、2025で14年。で、2025年にACLに行く。っていうことでいい?
:え、そうなの?(笑)
── 若い世代でいい選手っていますか?
:何人かいますよ。ここ10年、15年ですごく変わったと思う。みんな同じ絵を描いているからトップの選手と同じことをする。それはあんまり取り上げられないけどすごい財産だと思う。これは歴史の産物というか、予想した以上に子どもたちの反応はいい。齊藤未月や石原広教、神谷優太なんかもそうだけど、想いがあって下部組織から来てるから彼らがこのチームで活躍して、仮に出て行くときは「正しい出方」をするはず。
水谷:一昨年かな、レイソルとベルマーレのジュニアユース同士の試合があって、全くトップと同じ試合をしたと育成から聞いて。レイソルもカラーをだす育成で。そのカラーとカラーの戦いがトップと全く一緒だったという。これが増えると日本のサッカーは絶対面白くなりますね。
:僕が思うに柏と湘南ってトップチームでもビッグマッチですよ。お互いやってて楽しいですもん。
── 長期的にはどういったビジョンを描いてますか?
水谷:基本はSPRINT for 2025の内容。選手がどんどん出て行くのはフェアだと僕も思ってます。その時にトップチームと下部組織で「右サイド誰それが抜けたけど高校2年生の誰それがいるよ」というような会話がクラブでできるとACLにいけると思います。プラスアルファとしてスカウトで高卒や大卒を獲る。それが我々のあるべき姿だと思っています。
── 今の達成度はどれくらいでしょう?
水谷:齊藤未月や石原広教はいい形で入ってきていますが……まあ徐々にですね。ヨーロッパでは普通にそういう話になっていると思うので。そこで足りない部分は他所から連れてくる。そういう絵をしっかり描いていきたいですね。
── そういった循環が市民クラブが生き残る道、みたいなことを近年言われていますね。
水谷:なので小学生や中学生のスカウトが重要。もちろん無理矢理連れてくるのではなくて、「ベルマーレいいじゃん」と思ってもらう。さらに親も一緒に成長できるような絵が描きたいです。
── 曺監督はいかがでしょう? 中長期のビジョンというのは?
:根本的なクラブがあるべき姿っていうのは……湘南というチームに所属して、このチームで人間的にもサッカーの選手としても成長できたという選手が他のクラブに行って代表でも活躍して、また、その選手が湘南のサッカーを指導するために戻ってきてコーチや監督になっていく。このサイクルって素晴らしいと思うんです。徐々にそういう流れができてくるはずなんだけど、それが絶対できないのはスタイルが無いチーム。そういったチームにそういう指導者は絶対に生まれない。その点のアドバンテージが湘南にはある。2025にACLに仮に出たとして、そんなことを究極の目標にする必要は全くない。ただ、僕はこのチームで育った選手やスタッフが帰って来て、例えば永木や遠藤が監督になる。彼らが育成のコーチになって経験を積んで監督をやれる時代になった時に本当にベルマーレ全体の価値が上がると思う。その時はたまに酒飲んで応援しに来たいなと思う。年間シート買っちゃう。「お前の采配全然ダメ」って言ってやりたい(笑)
── 世界のサポーターってそういう循環を見てますよね。
:だから初心に帰ってそういうことをクラブとして大事にする。そういうエネルギーをクラブに貯蔵していく。実際やれると思っています。今のスタイルを経験した選手が指導者になった時、本質的なことはちゃんと教えられると思う。本来そうあるべきでしょJリーグも。でも自分のところで育った選手が監督になるってそんなに多くないですよ。
水谷:石井(正忠、鹿島アントラーズ監督)さんとか。
:ポイチ(森保一、サンフレッチェ広島監督)とか。僕もそういう意味ではちょっと違うし。それぐらいじゃないですかね? 鹿島はそういう意味で稀有なクラブですよね。
── クラブ、ひいては日本のサッカー界がどこに向かうかですね。
:日本って60歳になって小学生教えている人なんてほとんどいないじゃないですか。Jクラブで。おかしくないですか? 60歳になったからこそ小中学生教えた方がいいと思う。そのエネルギーが残っているかわからないけど僕、教えたいですよ、小中学生。すごいアイディアがあるんですよ。
── それはどんなことでしょう?
:ちゃんと自分のよさに気づくような指導をしてあげたい。そんなの当たり前だろと言われるかもしれないけど。選手が指導者から学ぶというのとは逆に、コーチも子どもたちから学ぶ。この矢印を相互に向ける、これが信頼関係なんです。子どもたちが一方的に崇めるだけじゃダメなんです。あの人すごい、だから学ぶっていうのは限界がある。だから今年はそういう風にやっています。僕が彼らから学ぼうと思ったら全然見方が変わる。
水谷:だから僕も社長と呼ばれるの嫌いだし言うなと言ってる。肩書きが相手になってしまうから。
── 率直に今年の目標など。
:(J1に)戻っていかなければいけないというのは僕が強調するまでもないですが。順調に勝ち星を重ねていくことに喜びを覚えるというよりはいろんな勝ち方を覚えさせたい。逆に負ける時は明確にこれが足りないと明らかになって負けたい。じゃないと僕が残った意味がないですよね。僕がクラブから求められているのはそういうことだと思っています。
水谷:うちは存在感出さなければいけなくて。J2の中位以下のクラブはどこもうちみたいな経営で。その中でも存在感を出せることを示したい。業界のためにも。
── 水谷さんはいかがでしょう?
水谷さん:明るく楽しく! もちろん簡単じゃないけれどJ1のステージには戻りたいです。
── ありがとうございました。

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