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ヘッドライン |2013.11.29

「最高位」受賞の若手酪農家片倉牧場 片倉幸一さん

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 牛も白い息を吐くほどに冷たい空気が張りつめる朝7時、日の光が差し込む牛舎の中で、掃除をするところから「片倉牧場」(平塚市北豊田)の1日は始まる。ここは、先月行われた「平成25年度神奈川県乳牛共進会」(神奈川県酪農業協同組合連合会主催)で経産牛(出産経験がある牛)部門最高位の農林水産大臣賞に選ばれたグランドチャンピオンの乳牛が飼育されている場所。平塚市内から同賞に選出されたのは38年ぶり。今週はそんな「快挙」を産んだ牧場を経営する酪農家を訪ねた。

 酪農業に従事して15年、この度栄誉に輝いた片倉幸一さん(35)は、両親と3人で同牧場を営む若手酪農家。牧場全体では約70頭の乳牛が飼育されており、そのうちの搾乳できる牛(=出産した牛)約40頭が牛舎の中で生活する。グランドチャンピオン牛もここにいる。
 だがチャンピオンとは言え、特別な育成をしてきたわけではない。平等に飼育する中で、1番良い体型に育った牛を共進会(審査基準は「牛乳の質」ではなく「乳牛として好ましい体型」)に出場させただけのことだ。掃除を終えた片倉さんは、餌を与えながら「賞を狙って育てているのではなく、日々、事故のないように、健康に育てているだけです」と謙遜する。
日々繰り返し、積み重ね
 餌やりを終えると、搾乳作業に入る。1頭1頭、搾乳機を取り付ける前に少し搾り、乳で体調を判断してから搾乳する。それを繰り返しつつ排泄物の処理も同時に行う。こういった一連の作業を1日に朝晩2回、365日休みなく続ける。大型連休も年末年始休業もなく、毎日が牛の世話。「サラリーマンと比べたら、メリットは少な過ぎると思いますよ」と笑うが、もちろん、自ら歩む道に一切の不満はない。生産者としての自負や喜びを感じているし、充足感も得ている。何よりも、牛が好きで酪農家になった。ただ寂しいのは、仲間が減ってきていること。
 JA湘南によれば現在、市内における酪農家の軒数は39軒。記録が残る昭和40年の786軒をピークに減少し続けている。
酪農家としての夢
 「農業全体では後継者不足という問題もありますが酪農に関しては、野菜や花と違って乳価が決められていたり、直売できなかったりする点も難しい所」と言う。今できることは何か。「自分たちがここで作っているんだ」という意識を高める「ブランド作り」と考える。以前は「おれたちの牛乳」という商品も作られたが、震災後に販売中止となった。理想は、地元の人に飲んでもらうこと。現在、搾乳された生乳は県内にある乳業会社の工場に集められ、複数の牧場の生乳が一括して混ぜられて製品となる。市内の牛乳が単独の商品として販売されることはなく、市民の手に渡ることはないのが現状だ。
 「決して『ブランド=プレミアムで高価』ではなく、求めやすい価格で出せればいい。これは、収入とは別の話。1人の酪農家としての気持ちの部分です」と展望を語る。「現実は中々厳しいですが、将来的には地元産の牛乳を地域の人に飲んでもらいたい。何しろ、うちの牛乳は自信を持って『美味い』と言えますから」と、作業を終えた牛舎の中で笑顔を光らせた。

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