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ニュース |2021.02.02

美食探究@大磯・二宮
若き料理人たちの静かなる闘い

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2020年4月、新型コロナウイルス感染拡大で緊急事態宣言発出。
2019年9月に二宮で開業した『Kai’s Kitchen」』は、ようやく商売が軌道に乗り始めたところだった。
コツコツと開業準備を進めていた大磯の『和食 よつ葉』は、苦悩の末に2020年6月、開業に踏み切った。
海に魚がいるかぎり、腕を信じてくれる常連客がいるかぎり、料理人は今日も、のれんを掛ける。

 

写真/山中基嘉,神 史子 取材・文/神 史子

「ウツボの天ぷらがうちの一番人気です」

Kai’s Kitchen
甲斐昂成(こうせい)さん

甲斐昂成さんは熊本県出身の32歳。子どものころから釣りにハマり、熊本大学工学部を卒業するも、「魚を仕事にしたい」と『四十八漁場』チェーンを展開する『ap Company』に就職。漁師からの買い付け業務を通して「価値なき魚」の存在を知る。その後、退職して湘南へ。江ノ島片瀬漁港をはじめ、横浜中央卸売市場、小田原市場では、「変わった魚が好きなおもしろい料理人」として有名

 甲斐昂成さんの経歴はちょっと変わっている。甲斐さんは熊本県出身。5歳から叔父にくっついて海釣りに没頭、熊本大学工学部に推薦入学してマテリアル工学を専攻するも、魚を追いかけるのに忙しく、卒業に6年を要した。
 就職と同時に上京。大手飲食グループ企業で全国の漁師から魚を買い付ける業務を担当していたときに、水揚げされても有効活用されない魚の多さに驚愕。価値がないと思われている魚のポテンシャルを引き出すことの楽しさに開眼し、どんどん引きこまれていった。
 その後、フリーの料理人として独立。企業主催のイベントで実演付きのケータリングをしたり、辻堂にある週末限定営業の店舗でうつぼやエイなどの“ジャンク魚”を使った料理を提供するなど“甲斐昂成の料理”を極めていく。
 「僕は自分を魚と人をつなぐ通訳者だと思っています。例えばウツボの天ぷらは、うまみのあるふっくらした身と皮目のコラーゲン質の層があり、そのコントラストがほかにはない味わいでやみつきになります。女性にはうれしい食材ですし、食べた人はみんな、見た目と味のギャップにウツボのファンになります」(甲斐さん)
 筆者も一度、当時小学6年生だった娘と甲斐さんの料理イベントで、ウツボのたたきを食べたことがある。びっくりしたのは、生魚といえば、まぐろと貝柱しか食べない娘が「おいしい」と夢中になって食べ、おかわりを要求したことだ。

“料理”ではなく“魚”で選ぶ

 2019年9月、元・落花生店だった古民家をコツコツと改装して店作りを進めていた『Kai’s Kitchen』を妻の有加さんと開業。甲斐さんの「見慣れない魚を使ったおいしい料理」を待ち望んでいたファンは多く、満員御礼のオープニングとなった。
 『Kai’s Kitchen』の料理だが、なにせ耳慣れない魚名も多いため、初めての来店ならその日の魚をいろいろ味わえる『おまかせコース』(8品〜10品で4,000円程度)がおすすめだ。“宝箱(魚が入った木箱)”から食べたい魚を選ぶこともできる。
 「最近考えているのは、アカエイのクセをうまみに変えることはできないかということ。
 それから海水温度の上昇化のせいだと思うんですが、アイゴという、本来は西日本に生息する魚が相模湾でも水揚げされるようになっています。身は抜群においしいのですが、皮と内臓がくさくて、関東では捨てちゃうんですよね。タカノハダイもしかり。刺身、食べてみます?」
 そういって白身の薄造りを出してくれた。やや弾力のある身は噛めば噛むほど甘みがあって美味。「いっそのこと網元になって、魚を自分で水揚げしたいくらいです」と笑った。

Kai’s Kitchenの“宝箱(魚箱)”。毎朝、小田原漁港に水揚げされた魚を甲斐さんが厳選。魚を指名して調理法を相談するのも楽しい

おまかせコースの『地魚のにぎり三貫』。厚めに切ったネタがうれしい。魚のあら汁とともに

<昼の部>では海鮮丼と煮魚定食を提供予定。写真は試作の『アオアジのごまじょうゆとアイゴの青唐辛子じょうゆの二種盛り丼』

「二宮の海で獲れた魚のうまみを引き出す、Kai’s Kitchenでしか食べられない味つけで楽しんでもらいたい」と甲斐さん

タカノハダイの薄造り。「魚のカタチがわかるように」と尾頭つき

Kai’s Kitchen

〈昼の部〉 ※2月初旬より開始予定。 営業時間/11:00〜16:00(木〜日)※水揚げがない日はお休み
〈夜の部〉 ※6月頃より再開予定。 「お任せコース」(ひとり4,000円〜)
営業時間/18:00〜22:00 E-mail kaiskitchen.shop@gmail.com
住所/中郡二宮町二宮169
駐車場/なし
http://kais-kitchen.shop/

 

「こんなときだからこそ、きちんとした日本料理を 気軽に楽しんでほしいのです」

和食 よつ葉
大久保暢哉(のぶや)さん

大久保暢哉さんは平塚市の出身。19歳から『鶴巻温泉 元湯陣屋』で修業。その後『鎌倉プリンスホテル』『箱根湯本 富士屋ホテル』などで腕を磨く。無口で口下手だが、その腕と真面目な人柄にひかれて、カウンター席は常連客で混み合う

 初めて『和食 よつ葉』で食事をしたのは、昨年8月29日の土曜日だった。 誕生日が近い小学校時代からの幼なじみと「おいしいものを食べに行こう」ということになり、どこにしようかと思案していたときにKai’s Kitchenの甲斐昂成さんがインスタグラムで『和食 よつ葉』を絶賛していて、ほぼ発作的に予約を入れたのだった。1日限りのコースランチ、先着10名のみ。前菜、刺身盛り、茶碗蒸し、天ぷら、食事、甘味で税込み3,300円。甲斐さんが褒めるぐらいだから味は確かだろうし、ふたり足して110歳を祝うには手頃な価格だと思った。
 しかし、茶碗蒸し、それに続く天ぷらを食べて分かった。“手頃”だなんてとんでもない。“破格”だったのだ。

日本料理は目と舌で味わう“俳句”

 日本料理を日本料理たらしめているのは“旬”と“だし”。時季の魚や野菜を使い、だしでうまみを引き出し増幅させて、器に四季の情緒を表現する。いわば日本料理は目と舌で味わう俳句。詠み人である料理人の感性を映す“作品”といってもいい。
 店主・大久保暢哉さんの茶碗蒸しは完璧だった。
 口の中でふわりと溶けていく卵の味わい、そのあとに残るだしの余韻。じんわりと幸福になる。「毎朝、だしをひく30〜40分が1日でいちばん大事な時間ですね。だしは日本料理の基本ですから、気が抜けません」(大久保さん)
 そして天ぷらは、シュッとしたエビが美しい。さくりと軽い衣とエビの甘みで、そのままで充分おいしい。王道の天ぷらだった。
 大久保さんは日本料理ひと筋33年、箱根富士屋ホテル、鎌倉ホテルなど名門ホテルを経て、昨年6月に妻の浩子さんとふたりで『和食 よつ葉』をオープン。まさかの新型コロナウイルス感染拡大にためらいもあったが“コロナの向こう側”へ、希望を捨てずに歩むことを決心した。
 それにしても、と思った。これだけ繊細で質の高い料理だ。“日本料理”とうたわないのはなぜか。「私は『日本料理 よつ葉』にしたかったんですが、すべてのお客さまにほっと和んでおいしい料理を楽しんでほしい。“和食”でいいんだと、寡黙な店主がここだけは譲らなかったんです」とは、おもてなし部門担当の浩子さん。
 現在は2日前までの予約制でおまかせコース料理のみで営業。「ご家族の集まりや、ちょっと外にでてひと息つきたいときにご利用いただければうれしいです」(浩子さん)
 2〜3人なら、ぜひカウンター席を。寡黙な店主の美しい包丁さばきを眺められる特等席だ。

「天ぷらとはお客との勝負」とは、“天ぷらの神様”と呼ばれる『みかわ是山居』の早乙女哲哉氏の言葉。さくっ……と響くひと口で、秒殺完敗

刺身の盛り合わせ。鮮度はもちろん、箸でつかみやすく、ひと口で食べられるよう小さく切りそろえてあるのも、日本料理の細やかな配慮

天丼(エビ、魚、野菜の3種。ゆず大根付き/1,500円)のテークアウトが大好評中。予約が無難。マイバッグか風呂敷(店でも500円で販売)の持参を

入口から見た店内。カウンター席もテーブル席も、ソーシャル・ディスタンスに配慮したレイアウトに

 

緊急事態宣言解除まで昼はコース料理のみ(6品3,300円)。夜はアラカルトあり。コース料理は5,000円〜。完全予約制で来店の2日前までに予約を

和食 よつ葉

TEL/0463-45-1208
住所/中郡大磯町大磯1867-1-101
営業時間/12:00〜14:00/17:00〜22:00(※2/7までは〜20:00)
定休日/不定休
駐車場/なし
https://yotsuba-oiso.jimdofree.com/

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