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ヘッドライン |2022.03.30

“まちづくり”について 
もう一度考えてみよう

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まちのために働くのは
やっぱり行政

 思えば子どものころ、「まちに行く」と言えば「中心商店街に行く」の意味合いだった。「まち」とは「繁華街」の意味で、日常とは少しかけ離れた存在だった。
 しかしこと「まちづくり」となるとどうだろう。
 「まちづくり」とは読んで字のごとく「まち」を「つくる」ことだが、ただ単に建物を建てるだとか、道路を作る、防災対策といったことだけを指すことは少ない。多くの場合、そこに暮らす人たちの生活環境や利便性の向上のために、持続的に行なわれる活動などが含まれる。個人から離れた存在だけを指すのではなく、暮らしそのものに関わってくることも「まちづくり」の1つ。だからこそ「まちづくり」が重要というわけだ。
 まちづくりの規模感は大きいものから小さいものまで無数にある。日常の身近な問題解決だけでなく、大きく平塚市全体を発展させていくために市が策定しているのが「平塚市都市マスタープラン」だ。平塚市として、「こういうまちにしていこう」というメッセージが込められたもので、1998年に最初のプランが作られ、その後「平塚市総合計画」の策定に伴い2008年に「第2次」版が作られた。さらに2017年には「別冊」が策定されるなど、社会情勢に応じて常にアップデートがなされている。例えば2011年の東日本大震災。防災意識をはじめ、国民の価値観を大きく変えたこの出来事の後に作られた「別冊」では、防災やエネルギー問題などの視点から新たな項目が盛り込まれるなどした。
 発展といっても、都市化だけを指すわけではない。プランのなかでは平塚市は大きく7つのエリアに分けられ、それぞれの特徴を生かした魅力アップの方針が示されている。中心地域なら人々が集い、住み、働く場所、西部地域なら恵まれた自然環境をいかして地域を活性化する、などだ。こうした机上の話を具体化させて市役所の各担当課がさまざまな事業に取り組んでいる。

2008年の平塚市都市マスタープランで描かれた将来都市構造図。10年以上前のものだが、すでに今の平塚につながるような目標立てがされている。こういった過去からのつながりが今の平塚を形作っているのだ

大規模なまちづくりの実例

ツインシティ

 東海道新幹線新駅を誘致している寒川町倉見地区と、相模川を挟んだ平塚市大神地区が一体となった環境共生都市を形成することを目的としているツインシティ。大神地区ではすでに物流倉庫が群立し、国道129号沿いの風景が変わりつつある。今年に入り、中核施設であるイオンモールの建設もいよいよ始まった。また、このほど新相模小学校が誕生した。この4月からは約300人の児童が新校舎に通う。小規模ながら、既存の学校のイメージとは違う「ロの字型」の構造が特徴的で、各教室には木材がふんだんに使われている。来春のイオンモールオープンに向け、大神エリアのまちづくりはさらに加速していくはずだ。

ひらしん平塚文化芸術ホール

 平塚市民はもちろん、近隣住民にとっても待望の新ホールが3月26日にオープンを迎えた。見附台周辺地区整備事業として2018年に事業者募集を始めてから約4年。事業の本丸が遂に完成した。ホール内は1,200人収容の大ホールのほか、隣接した公園とシームレスに使える多目的ホールや各種会議室、練習室などを完備。何も用がなくてもふらっと立ち寄れるような、にぎわいの発信地・交流施設としての役割にも期待がかかる。旧市民センター跡地、錦町駐車場跡地に建てられた商業施設はすでに多くの人々でにぎわっているが、ホールが完成したことでより一層、周辺地域が活性化していきそうだ。

主役は市民!
まちづくりにはどうやって関わるの?

平塚市は大きくまちが向かっていく方向性を定め、大きなまちづくりを進めている。
ではそこに暮らす私たち自身はどのようにまちづくりに関わればよいのだろうか。


市民活動のことご相談ください!

湘南NPOサポートセンター理事長 坂田美保子さん

キーワードは「協働」

 「まちづくり」というと対岸の出来事のような大規模開発に目がいきがちではあるが、それだけではないのは前述のとおり。それどころか「まちづくりは市民のもの」と明文化されている。それが「平塚市自治基本条例」だ。国と自治体が上下関係から対等・協力の関係へと時代が移るにつれ、各自治体には「暮らす人たちが互いに連携・協力して自らのまちは自らが治める」ことを実現していくことが求められるようになった。
 2006年に作られたこの条例の第7条に「協働の原則」がある。それによると市民と議会および市の執行機関は対等な立場で連携し、協力してまちづくりを進めることが原則とされている。
 この条例に先駆けて、2003年に設置されたのがひらつか市民活動センター。まちづくりに携わる人々や行政をつなぐハブのような役割を担っている。登録される市民団体は2020年度末で332団体にのぼる。それだけ多くの市民がまちづくりに関心をもち、何らかの団体を作ってまで活動しているというわけだ。
 今現在、市民活動はどういった状況にあるのか。センターの運営を市から委託されているNPO法人湘南NPOサポートセンターの理事長、坂田美保子さんは「コロナ禍で活動が制限されている団体も多いですが、一方でコロナ禍ならではの問題、貧困問題や子育て支援に携わる団体はかなり忙しく活動しています」という。同時にオンライン化も進み、海外につながりが生まれたような団体や、活動の幅が広がった団体も多いそうだ。一方で「やっぱり”顔の見えるつながり“が大切な活動も多いです」とも。「子ども食堂などは本来、一緒に食事をするということが重要でした。テイクアウトで活動を続けることは素晴らしいですが、withコロナでも徐々にリアルの活動が再開できれば」と期待している。そんななか、夜間の見回りや、空き店舗の活用など、コロナ禍ならではの活動を始めたいという相談も寄せられているという。
 「さまざまな活動があるなかで、やっぱり各地域の自治会とつながっている団体は強いですよね。地域で課題に取り組むにあたっての問題は結局、高齢化、後継者不足……で50年前と大差ないんです」。市民活動は、なかなか認められるということが少ない。「好きでやってるんでしょ?」という目でも見られるのも当たり前だ。それでも続けられるのは「誰かの役に立っている」という気持ち。地域への関心が希薄な時代ではあるが、その集合体が社会をつくっているのは今も昔も変わらない。
 「なんだか面倒くさそうだし、難しいことはお任せします」という人もいるだろう。だが「じゃあちょっとできることを探してみようかな」と少しでも感じた人にはぜひ一歩を踏み出してもらいたい。その一歩がなければ、今の平塚はなかったのだから。

COLUMN まち・町・街って何が違う?
同じ読みでありながらちょっとずつイメージの違う「まち」「街」「町」。本紙でも文脈によって使い分けている。まず「町」は基本的に行政区画を指す。例えば大磯町や二宮町、読みは違うが紅谷町や八重咲町のような使われ方だ。一方で「街」は広く「商店やビルなどが立ち並ぶところ」の意味で使う。町とは違い、指す範囲が広がり、街の灯とか街角といった使い方が主になる。これが「まち」になると、さらにその意味の範囲が広がり、人々の暮らしが営まれる場所、といった概念的な意味合いが含まれてくる。今号のテーマ「まちづくり」も大きな意味をもつからこそひらがな書きをしてるというわけ。文脈によって例外もあるが、知っておくと書き手が伝えたいことがより深く汲み取れるようになるかも。

 

みんなのまちづくりの事例

平塚市では毎年、市民活動団体や事業者などによるまちの課題を解決する活動を表彰する「平塚市みんなのまちづくり事例表彰」を行なっている。今年度も第3回表彰が行なわれ、応募のあった48事例から左記の10団体・事業者が年間大賞として表彰を受けた。

平塚をみがく会
落書きのないまちを目指して活動。落書き防止のための小・中学生によるアート制作のサポートなども行なう。

湘南の森
森の環境維持と安全管理のため、植栽や伐採などを実施。自然観察会なども企画・運営している。

NPO法人しえんのまなび舎
市民活動などで誰かを「支援する人」を支援する団体。昨今は支援者が疲弊していくケースが増えているという。

ママぎゅっと
子育てに悩みを抱えるママのための出会いとつながりを支援することを目的にワークショップやスクールなどを企画。

里山をよみがえらせる会
人と関わりの薄れた山林・農地を保全するとともに、自然の中での遊びを提供。丘陵部の魅力づくりにも貢献。

花水地区町内福祉村
平塚市立花水公民館
「アゲハの育て方を教えてもらおう」講座を開催。高齢者と子どもが交流できる世代間交流の場を生み出している。

ふじみ野朝体操の会
16年にわたり毎朝NHKのTV体操と公園清掃を行なう。主に高齢者のコミュニケーションの場になっている。

有限会社相馬工業
市内小中学校の除菌ボランティアに従事。本業を生かし、コロナ禍という新たな社会情勢に対応している。

株式会社伊達建設
年に1度、湘南海岸環境クリーン作戦を11年にわたり実施。社員はもちろん家族や協力会社なども活動している。

株式会社タシロ
地域に密着した金属加工会社。地元小学校の社会見学を受け入れているほか、オンライン工場見学にも対応。

海活プロジェクトでのサーフィン体験

ラグビースクールの様子

株式会社甲斐組
今村代表の父である善美会長が1967年に川崎で創業。1969年に現在の場所へ移転。土木・建築・舗装などの官公庁事業のほか、建築や解体に関する民間事業や不動産事業、アスファルト合材販売なども手がける総合建設会社。社名は善美会長の出身地・山梨の旧国名から。

 「まちづくり」にはそこにある企業も大きく関わる。特に本業が地域に根ざしたものであれば、必然的に自分たちが仕事をする「まち」について関心を寄せることになる。株式会社甲斐組は平塚の総合建設業。約半世紀、平塚のまちづくりに関わってきた。2代目社長・今村佳広さんは仕事はもちろん、さまざまな面からまちづくりに関わっている。
 「この仕事に携わって30年経ちますが、そのときからインフラや道路づくりなどの公共事業に携わっていました。そんな父の背中を見て育ったわけですから、物心ついた時から『まちづくり』は身近なものだったと思います」と今村社長。現在では「地域笑顔創造企業」を標榜し、まちづくりのトップランナーとして日々の業務に取り組んでいるが、今村社長の幼少期はまた少し事情が違ったという。
 「当時は建設会社というよりは土建屋。汚い・きつい・危険どころか、まともな社会人の働く場所ではなかったと思います。当然社会的地位も低く、近所の団地で駄々をこねる子どもが『いつまでも泣いていると甲斐組に入れちゃうよ!』と叱られ泣き止むという笑い話もあるような場所でした」。従業員たちは「飯場」と呼ばれる宿泊施設で寝食を共にするのだが、問題が起きるのは日常茶飯事。彼らを取りまとめる現会長の剛腕ぶりも想像に難くない。今村少年はそんな環境のなかで育ってきた。
 現在の「地域笑顔創造企業」の原点は、そんな父のある思い出が原点になっている。
 今村社長が小学生のころ、台風の影響で学校が子どもたちを早退させるということがあった。今のように災害対応がしっかりしていたわけではなく「各自帰りなさい」というだけで、昇降口は迎えを待つ子どもでいっぱいだったそうだ。「私は母が迎えに来てくれたんですがその様子を見て『送ってあげないと大変だ』となりまして。すると父が『俺が行く』と。ところが学校につくと『子どもたちを1人で帰らせるとは何事だ!』と先生たちに怒鳴り散らすわけですよ。思えば先生たちも業務があるとは思うんですが『自分たちは安全な校舎のなかにいて子どもたちは外に出すのか』とまあこんな具合で。先生たちもタジタジだったんですが、しまいには『俺がトラックで送る』と。それで本当にトラックを出してみんなを送ったんですよ。今じゃ問題かもしれませんが、その姿はものすごくかっこよくて誇らしかったです」。今村社長にとって父である先代社長はそんな力強さと気風の良さを兼ね備えていた。インフラを手掛ける企業だけに、仕事内容はイコールまちづくりに直結する。それは当然のことだが、職人としての技術を売り、その先にあるものはなんなのか。それを見つけようというときに、自分たちの仕事の先には地域の笑顔があると行き着いた。
 今村社長は平塚を「素晴らしいまち」と称える。「今年90周年ですが市政施行は県下4番目、戦災復興のまちですから道路も整備されているし、工業が発展すると同時に商業が発展してきた。課題や問題がないとは言いませんが、県西ではトップのまちだと思っています」。その平塚で、描く未来もある。「スポーツのまちになってほしいですね。ベルマーレというチームがあって、海・山・川があり、平地でもある。平塚のポテンシャルのなかでスポーツに適した環境というのは打ち出していくべきだと考えています。QOLを上げるのにスポーツほどいいものはない。お年寄りも長生きできるでしょう」


 そんな思いを形にしようと同社が取り組んでいるのが平塚市南原の「湘南いこいの広場 開発計画」だ。5500坪におよぶ横浜国大の土地を借り上げ、福祉や健康などの多目的施設の誘致を目指すもので、これだけ大規模なものは甲斐組としても初の試みだという。「じつは事業として利益がでるかというと、結構ギリギリなんです。でもこれは絶対に平塚のためになる。ここで笑顔を生み出そうという気持ちで始めました。今は事業者を誘致している段階で、実際の開業は2024年度以降になると思います」
 本業以外にも今村社長の活躍の場は広い。所在地である大島の地域交流を目的とした大島フェスタ、海岸の魅力化を図る海活プロジェクト、平塚市ラグビーフットボール協会の業務など、両手でも数えきれないほどの団体や組織に所属して活躍している上に、執筆業やYouTubeチャンネル出演まで取り組んでいる。
 そのバイタリティはどこからくるのか。
 「もうこれは郷土愛・地域愛です。この地に育ててもらって事業もインフラを担っている。携わっているのは地域還元のことばかりです。恩返しというのも月並みですが、われわれが受けたものを別の形で循環させていくのが役目かなと思っています。願わくば『甲斐組に入れちゃうよ』から『甲斐組に入りたい』になってほしい。業界に新たな価値観を産みたいなと思っています」

昨年実施したハロウィンイベントの一幕。
今村社長自らお菓子を配った

もちろん、本業である社長業もしっかり務めあげている

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