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ヘッドライン |2012.11.09

心、震わす古の音フルート・土笛奏者 縄文笛 毅さん

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クラシックのような、澄んだ音はしない。風の音や波の音にも近い、雑多な周波数も含んだ、原始的で素朴な笛の音。縄文時代の遺跡から出土した「笛」と思われる土器を復元し、「縄文笛」として太古の音を奏で、全国各地の遺跡や博物館等でコンサート活動を行っている平塚市内在住のフルート・土笛奏者。芸名を「縄文笛 毅(じょうもんぶえ つよし)」という。

生まれながらにして、視力障がいがあった縄文笛 毅さん(45)。笛との出会いは、小、中と通った福岡県内の盲学校。リコーダーの先生が吹く笛の音に魅せられ、リコーダーを始めた。高校は普通高校へ進学。オーケストラ部で学んだフルートを専攻し、昭和音楽大学に入学した。そして在学中、旅行に行ったインドで病に倒れ、視力のほとんどを失ったという。人生の転機は、この塞ぎ込んでいた時期に訪れる。
出会い
人生を見失っていた。一人で歩くことができない、昨日書いた字が読めない、このまま生きていても……と、塞ぎ込んだ。療養のため、故郷福岡に帰っていた時期に、気分転換にとドライブに連れて行ってくれたのは盲学校時代のリコーダーの先生だった。たまたま入った海辺の喫茶店。マスターが「自作したが、音が出ないので吹いてほしい」という小さな土笛。吹いてみると、ガラス窓も振動する程の大きな音。その時、力強く思えたこと。「これで生きていける」  その日を境に、「縄文笛」と名付けた土笛を自作するようになり、演奏活動で生活する人生が始まった。最初のうちは喫茶店や山小屋など小さな舞台だったが、お客さんはとても喜んでくれた。懐かしい音だ、自然の音だ、と。続けていくうちに、県内、全国からも声がかかり、実際の縄文遺跡、古墳等でも演奏するようになった。さらには土器の復元を手がけているという戸村正己氏とも出会い、現在では縄文笛、弥生笛の製作者としての同氏と、二人三脚で歩んでいる。
何のために
「幸せの瞬間は、コンサートで吹いているとき」と言う毅さん。ステージのない日も吹く。毎日、当たり前に呼吸しているように、吹く。藤沢市内の路上でのフルート演奏も約20年続けている。だが仕事や趣味で吹いているのではない。「この人は『吹くことが生きること』なんです」と妻・ゆかりさん。以前、笛も吹けないほど体を壊したときの様子を、土が壊れていくようだった、と振り返る。「私はこの人が輝くことが好きだから」と、厳しいときでも、共に前を見て進んできた。吹くことは、生きていることの証明でもあり、周りに生きる喜びを教えてくれる。  何のために吹くのか―。「生きる力を伝えたい」。一度、見失った自分の人生経験からも、古代から続く歴史の面からも。「縄文時代というのは生き抜くのに厳しい時代だったことでしょう。そんな時代にもエネルギッシュな音を出す笛が作られた。そしてみんな一生懸命、力強く生きてきたからこそ歴史が続き、今の自分にも繋がっている」  古代に想いを馳せ、古代の音を奏でる縄文笛 毅さん。自分の人生を重ね合わせ、生きる喜びを謳う。純粋な心から奏でられたその澄み切った音色は、時代を超えて今、我々に力強く語りかける。
縄文笛コンサート事務局☎34-9203
【写真上】平塚海岸にて えとき
【写真下】土器を復元した縄文笛(下)と弥生笛(上)
 

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