塗装屋さんの社会貢献リトアニアで杉原千畝記念館修繕に参加した相馬 純さん


第二次世界大戦中に杉原千畝氏が多くのユダヤ人を救ったことで知られるリトアニア共和国。その杉原氏が執務を行った旧領事館を修繕するボランティア活動に、平塚市の塗装業・相馬 純さん(36)が参加した。リトアニアは3年後の東京オリンピック・パラリンピックの際、平塚市で事前キャンプを実施することが決まっているが、日本ではまだ馴染みの少ない国である。どのような体験をしてきたのか、相馬さんに話を聞いた。
相馬さんは、父親が始めた塗装業の2代目。22歳で経営を引き継ぎ、当時3人だった社員が今では10人ほどまで増えた。
その中で「3K(危険、きつい、汚い)」と言われる塗装業への見方を変えたいとの思いが膨らみ、全国の塗装業者で作るボランティア団体「塗魂ペインターズ」を知って5年前に加入。それ以来国内の被災地など30カ所以上で建物の外壁や公園の遊具に塗料を塗るボランティアを行ってきた。海外で同様の活動をする「塗魂インターナショナル」にも入り2年前にはハワイでの活動に参加。真珠湾で献花を行い平和を祈ったことや、現地の人からとても喜ばれ感謝されたことが心に残ったという。
今回のリトアニアでの修繕は、「塗魂インターナショナル」の中心メンバーが旧領事館の老朽化を新聞で知ったことから始まった。この領事館で執務した杉原千畝は日本の外交官。第二次世界大戦中にリトアニアに赴任し、ナチスの迫害により逃れてきたユダヤ系を中心とする難民らに対し、外務省からの命令に反してビザを発給、およそ6,000人もの難民を救ったことで知られる。
相馬さんはこの修繕の話を聞き、すぐに参加を決めた。その時はどこにある国かも知らなかったが、後に平塚市がリトアニアの事前キャンプ地に決まり「縁があるな」と感じていたという。
職人の高い技術で修繕
今回参加したのは、北海道から鹿児島までの塗装職人や技術者ら約60人。今月3日に記念館のあるカウナス市に入った。
そこで初めて、使う塗料が日本のペンキと違い、歴史的な建物の修繕に用いられるガラス繊維の入った特殊なものであることが分かった。作業を見守っていた現地の設計士からは「本当にできるのか」という不安が伝わってきたという。しかし、参加者の中でも特に材料に詳しい人が中心となり、施工方法を工夫。5日間で延べ500㎡ほどを塗り終えた。その仕上がりに現地の人たちからは「グレイト!」と声をかけてもらったといい、相馬さんは歴史的に意義のある建物の修復に携われたことが「すごく嬉しかった」と振り返る。また帰国後には知らない人からお礼を言われることもあり、この活動の大きさを日に日に感じている。
着物姿で交流も
滞在中、昼間は作業、その後も打ち合わせなどで慌しかったが、相馬さんは時間を見つけて町に出た。日本文化を伝えたいとの思いもあり、父親のお気に入りの着物を持参。出発前に母親に教わり現地では一人で着付けに挑戦した。その姿でレセプションやコンサートなどに出かけると、「一緒に写真を」とたくさんの人に囲まれ現地のラジオ局から取材も受けた。こちらが日本人とわかると「よく来てくれた」と声をかけられ、今でも現地で杉原氏が尊敬されていることが印象的だったという。また、一見素っ気ない感じでも話してみるとフレンドリーな人が多いとも感じたという。
こうして生まれた縁。今後平塚にリトアニアの人が訪れる機会が増えることから、「向こうのことを知っていればこちらから話しかけやすいと思うので、見てきた事をいろんな人に伝えたい。自分がリトアニアでしてもらったように、平塚に来る人が馴染みやすい環境が作れたら」と相馬さん。自分が手伝うことで、草の根の交流が今後広がっていくことを願っている。
【写真】
1)下地を補修する様子(相馬さん提供)
2)着物姿で記念撮影(相馬さん提供)
3)修繕前の杉原千畝記念館(平塚市提供)
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