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相模湾の恵みを届ける若き漁師たち

——平塚「日海丸」 取材・文/湘南ジャーナル編集部
0:30 | 静けさの中、港が目を覚ます

真夜中の港に作業灯が灯り、定置網漁船「日海丸(にっかいまる)」の一日が静かに始まっていた。暗闇の中、言葉少なく漁師たちはてきぱきと出港の準備を進める。 魚を新鮮に運ぶための氷や殺菌冷海水を船に積み込み、船長は船の点検を済ませる。この日の乗船は5人。 三代目網元の田中勇輝さん(41)、そのいとこで船長の田中健太さん、そして若き3人の漁師たちだ。仕事に真摯に向き合う一人ひとりの動きに、無駄はない。
1:00 | 出港 ― 静寂に宿る網元の覚悟
低く響くエンジン音とともに、船は港を離れる。人声はなく、まるで舞台の幕開けの音だけが聞こえる、そんな静けさだ。
ただまっすぐ漁場を目指す。進むにつれ、カモメが船を追いかけ始める。
漁場までのわずかな時間、勇輝さんに話を聞いた。
「家が網元だった。特に“なりたいもの”を考えることもなく、自然とこの道に入り、一度もやめたいと思ったことはない」と、気負いのない穏やかな表情で語る。
勇輝さんは、父の背中を追って10代から漁に出ており、すでに20年以上の経験を持つベテランだ。 「一度だけ、本当に怖かったことがある。海に落ちたとき“これで死ぬかもしれない”と感じた。実は金づちなんです」と笑うが、シケの日もある毎日変わる海という自然の力を前にした恐怖は今も忘れないという。 それでも翌朝には、当たり前のように海へ出た。海とともに生きる。それが勇輝さんの“日常”だ。

1:20 | 定置網を引く ― 無言の連携と水揚げ

沖までおよそ10分。漁場に近づくにつれ、カモメたちは数を増し、鳴きながら旋回して船を追いかけてくる。暗闇の中、白い羽が舞う光景は、幻想的で美しい。
漁場に到着すると、船長の合図で一斉に作業が始まる。 定置網のロープを巻き上げ、網を引き上げる。 静まり返った船上に、漁師たちの息づかいが響く。やがて「網起こし」の声がかかり、同じリズムで力強く網を引き揚げ、水揚げの準備が始まる。
網が上がると同時に、魚の銀鱗が海面にきらめく。海の命と対面する、美しく力強い瞬間だ。 その日、何が入っているかは海だけが知っている。

2:30 | 定置網を戻す ― 水揚げの変化と漁師の思い
気候や潮の変化により、水揚げ量や魚種も変わる。 特に最近は魚が少ない。気候変動による生態系や潮目の変化が影響しているのだろう。「魚が少ないのは残念。でも、ここには魚がいる。」 彼らのモチベーションは、やはり喜んでもらえる美味しい魚を獲ること。 「平塚の金アジが獲れると、やっぱりうれしい」——それがこの地の漁師の誇りだ。
どんな魚でもうれしい。時には驚くような高級な魚や巨大な魚も入るが、この地の最高の魚「金アジをとるのが一番うれしい。」という
3:00 | 帰港 ― 港に息づく信頼
港に戻ると、荷捌き場にはすでに勇輝さんの父、“(株)日海丸の社長 田中邦男大将”が待っていた。
リフトの音が響き、港は一気ににぎやかな仕事場へと変わる。
陸ではスタッフや業者が待ち構え、漁師たちは休むことなく、魚の仕分けや漁の片付けに取り掛かる。 手際よく作業が進む。
多くを語らず、息子たちの動きを見守る大将の姿。 その背中には、長年この船と港を支えてきた重みと信頼がにじんでいた。
4:00 | 港から地域の食卓へ ― 笑顔が戻る

空が白み始める。夜明けはもうすぐだ。 水揚げされた魚は荷捌き場で仕分けられる。水揚げが多い日は、朝まで作業が続く。漁師の仕事は魚を獲るだけではない。
船から道具を下ろし、洗浄し、荷捌き場を丁寧に掃除する。
毎日魚を扱っているとは思えないほど、港は整理され、清潔に保たれている。
作業がひと段落すると、空気がやわらぎ、笑顔が戻る。
冗談が飛び交い、ムードメーカーの船長が場を和ませる。
海の上で見せる厳しい表情とは異なり、船長の人柄を感じる時間だ。
張り詰めた時間と、笑い合う時間――そのギャップが、このチームの強さと温かさを物語っていた。
若き力が、漁の未来を拓く

日海丸には、20~30代の若手漁師たちがたくましく乗り込む。
全国的に漁師不足が叫ばれる中、日海丸にはその気配はない。
最近ではTikTokで漁や港の様子を発信し、漁師の日常を多くの人に届けている。
「地元の魚をもっと知って、食べてほしい。日海丸を通して、海のことを少しでも感じてもらえたらと勇輝さんは語る。

次の世代へ ― “メリハリ”が支える海の仕事
日海丸の漁師たちは、次の世代へ漁の技と心をつなぐため、古くからの姿勢を大切にしている。 締めるところは締め、緩めるところは緩める。
その“メリハリ”が、自然と向き合う日々を支えている。覚悟と根性、そして笑顔。 そのすべてを兼ね備えた漁師たちが、今日も相模湾から私たちの食卓へ、新鮮な恵みを届けてくれている。
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