湘南ベルマーレ新体制発表会

現場の熱量は確かに伝わった
では、経営は?
新体制発表会という場は、言葉の選び方や視線の置きどころに、その人の立ち位置がにじみ出る。今回の湘南ベルマーレ新体制発表会も、そうした細部の積み重ねによって、クラブの現在地を静かに映し出していた。
私は、この発表会に二つの目的を持って臨んだ。一つは、新経営陣がサポーターを前にして語ったオフィシャルな言葉と数字を、事実として受け止め、検証すること。もう一つは、ベルマーレがどのようなチームとして再編され、誰が当事者として2026年を戦おうとしているのかを、言葉の端々から読み取ることだった。
経営陣の言葉と、数字の置きどころ

発表会は、塩田会長の挨拶から始まった。貸付けの問題などへの謝罪と、「ライザップグループの強みをいかして、クラブ経営にフルコミットする」といった前向きな発言があった。
その後、大多和社長に経営面の紹介に対するバトンタッチがなされ、クラブのファイナンスとこれまで積み重ねてきた地域活動や社会的価値を振り返る内容が紹介された。地域活動や社会的価値は、湘南ベルマーレというクラブの「背景」として非常に重要な要素である。

だが、示された売上高とチーム人件費のグラフを見た瞬間に、私は違和感で一杯になった。2026年に向けて人件費が明確に下がっていることを示す線。売上は12%減少し、人件費は昨年対比53%まで著しく削減されている。クラブ運営の人手の無さをよく耳にしてきたし、選手の獲得や維持に対する姿勢として、この数字がクラブ経営への信頼感にはつながらなかった。
最短でJ1昇格を目指すクラブの組織縮小の構図。事業赤字を単純な経費カットの戦略で埋めていく―そんな構図にさえ見えてしまう。売上が落ちる局面で人件費を抑える判断が、どのような戦略意図に基づくものなのか。その判断を、誰が当事者として引き受けるのか。そして、その判断がピッチ上の「強さ」にどう結びつくのか。
ここで問題にしたいのは、数字ではない。経営側がこのクラブの強化と勝利に対して、どのような立場で、どこまで関与するのかという説明が、発表の中で十分に語られたとは言い難い。2月に開催されるクラブカンファレンスでは明確に聞けるのだろうか。
坂本氏の言葉にあった現場感

私自身の不安を和らげ、会場の雰囲気が変わったと感じたのは、前社長で取締役の坂本氏が話し始めてからである。
坂本氏はフットボール部門を統括する立場として、2026年を「信頼を取り戻す時間」と位置づけた。昇格が直接かからない大会であっても、勝利を目指すこと。競争を避けないこと。結果が出なければ、その責任を引き受けること。
言葉の選び方は決して強い調子ではなかったが、現場を預かる者としての当事者意識は明確だった。監督選定の基準、補強の考え方、選手に求める姿勢――そこにあったのは抽象論ではなく、責任者としての明確な方針だった。
長澤徹監督が示した「当事者」と「張本人」

今回の発表会で、最も印象に残ったのは新監督・長澤徹氏の言葉だった。
長澤監督は「湘南スタイル」という言葉を安易に定義しなかった。歴代監督や関係者、選手に問い続けた上で、たどり着いた基準はシンプルだった。
サポーターの心を動かせるかどうか。
そして、その心を動かす張本人は、目の前ではなく、背後に並ぶ選手たちだと語った。
反町康治監督のサッカー、そしてチームを愛し挑戦する姿勢を植え付けた曺貴裁監督の系譜を「継承」という言葉で結びながら、長澤監督は、選手、サポーター、自身の立ち位置を整理してみせた。
「心が動いたら声を出してほしい。納得できない試合をしたら厳しい言葉を投げてほしい」
この言葉は、サポーターを当事者として扱う宣言でもあった。声を出すことも、厳しい言葉を投げることも、すべて当事者として向き合ってほしい――その語り口は熱を帯びすぎることなく、しかしはっきりとしていた。
選手たちの言葉に共通していたもの
新加入選手、レンタルバックの選手たちのコメントを聞いていて、繰り返し耳に残ったのは「チーム」という言葉だった。
自分がどう見られるかではなく、チームのために何ができるか。競争の中で役割を引き受ける覚悟。それらの言葉からは、坂本氏と長澤監督が示した方向性を、選手たちが正確に理解していることが伝わってきた。
降格という厳しい結果を受けた選手、新たな挑戦としてこのクラブを選んだ選手。彼らはこのチームの張本人であり、当事者として2026年に向き合おうとしているように見えた。皆が同じ船に乗って、航路を見出し始めたことを感じさせた。
静かに残った問い
チームづくりについては、坂本氏、長澤監督、そして選手たちのコミットメントによって、希望が見えた。一方で、経営側がこのクラブの「強さ」に対して、どこまで当事者として関与するのか。その点については、説明が尽くされたとは言い難い。これは数字の問題ではなく、経営の意思決定が現場の覚悟とどう結びつくのかという、構造の問題である。
2026年の航海は、すでに始まっている。選手と現場が歩み始めた今、経営はどの地点で、その輪に加わるのか。今回の発表会は、その問いを静かに残した。
取材 定成幸代
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