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インタビュー |2026.02.04

「人・この町を拠点に、未来が動く」(1)

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浅野重人氏ロングインタビュー

4度目の世界一
平塚を拠点にする
プロラフティングチーム テイケイ
世界一を導いた浅野重人監督の
歩みと更なる挑戦

平塚を拠点に活動する日本唯一のプロラフティングチーム「チームテイケイ」が、2025年12月1日~7日にマレーシアで開催されたIRF世界ラフティング選手権で総合優勝を果たした。世界一は今回で4度目となる。大会後、監督の浅野重人氏に話を聞いた。結果の報告にとどまらず、監督としてチームを優勝へ導いてきた背景にある考え方や歩み、その人となりを知りたかったからだ。

ワクワクを探しに、海外へ

浅野重人氏がラフティングに出会ったのは1993年、オーストラリア・ケアンズだった。高校卒業後、日本で定められた進路に進むのではなく、ワーキングホリデーで海外に飛び出した。自由に自分の進路を考え、ワクワクするものを探したいという思いがあったという。
現地でインストラクターとなり、競技としてのラフティングを知った。スピードや迫力だけでなく、流れを読み、自然と向き合う感覚に強く惹かれたと語る。
1997年に帰国したが、日本には世界を目指せる競技環境も、チームの土台もほとんどなかった。選手も資金も時間も足りず、まず必要だったのは、競技を続けるための基盤づくりだった。日々、スポンサー探しに奔走する中で出会ったのが、警備会社 テイケイ株式会社の会長である。
会長は、浅野氏の競技への真摯な向き合い方と熱意に共感し、全面的な支援を約束した。チームテイケイは同社の実業団チームとして運営されてきたが、一般的な「仕事と競技を掛け持ちする実業団」とは異なる。選手は業務に就くことはなく、競技そのものに専念できる体制が整えられている。
取材してまず驚かされたのは、その徹底ぶりだった。同時に、それは逃げ場のない環境でもある。競技に真剣に向き合わなければ、成り立たない。選手は「ラフティングが好き」であることが前提であり、夢中になれる人間に絞られる。結果として、競技への姿勢そのものがチームの質を決める構造になっていった。
チームは平塚にクラブハウスを構え、湘南マリーナを起点に馬入川(相模川)や花水川(金目川)など、地域の川で日々練習を続けてきた。特別な施設ではなく、この町の自然を使い切ることが、チームの日常になっている。

「10」から「1」へ。
指導の変化が示したもの

4度目の世界一。その裏側で印象的だったのは、浅野氏が語った“指導の変化”だ。「今回の大会は、選手たちに対してほぼ何も言わず、見守るステージに来れた」
かつては10を語っていたものを、いまは「1だけ言う」。本当に必要なことだけを残し、あとは黙って待つ。
「言っても、その時には分からない。経験して初めて腑に落ちる」。指導者として、言わないことで負けたら責任を背負うという恐れがあると、つい口を出してしまう。だが今は違うという。「恐れがないと、見守れる」。
今回は、選手たちが言われなくても感じ取り、自ら考え、実行した。成功や優勝を、言葉で導いたのではなく、身体で理解し、行動として表した大会だった。そのことを、浅野氏自身が最も強く実感した大会でもあった。
その背景には、浅野氏自身が長年にわたり、肉体的・精神的な限界や目標と向き合い続けてきた時間がある。さらに、その姿勢に応える形で周囲の支えや環境が整えられてきた。努力と支援、その二つが重なった結果として、今回の総合優勝があったと見ることもできる。

自然の怖さごと、次の世代へ

浅野氏が語る「自然の魅力」は、広大さや美しさだけではない。そこには、怖さも含まれる。流れを読み違えれば命に関わる世界で、自然と真摯に向き合うことで、初めて見えてくるものがあるという。
「自然から教えられることは多い」。無理をすれば拒まれ、調和すれば進める。その関係性の中に、人が生きる上でのヒントがあると考えている。今の時代に起きているさまざまな問題も、自然と向き合うことで解決の糸口が見えてくるものが多いのではないか、と話す。
浅野氏は、妻の裕子さんとともに子ども向けの自然体験活動にも取り組んできた。川での過ごし方や自然との向き合い方を伝え学ぶ場で、今までは大磯で行ってきたこの活動も、国内外問わず、ボーダレスに活動をしていきたいと言う。


競技の世界で結果を出してきた浅野氏だが、今後は監督という立場を次代へ渡し、普及や運営の側に回るという。アジア・オセアニアでレースやイベントをつくり、競技の裾野を広げたい。さらに、オリンピック志向でコンパクト化していく世界大会の流れの中で、かつてのように大自然の激流(グレード5級)の舞台を取り戻したいとも語る。

浅野氏にとって、世界一は「到達点」であると同時に「通過点」でもあった。平塚の川で培われた技術と感覚が、世界へとつながったことは、この街の大きな誇りでもある。浅野氏のインタビューを通して、自身も未来に向けて背中を押された気がした。

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