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ヘッドライン |2015.03.13

殺処分ゼロのその先へペットと共に生きる意味を考える

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0313 1面記事写真
 12万8,241という数字を聞いて何を思うだろうか。約13万、数字だけを見ると、ちょっと高めの家賃。あるいは平塚市の人口の約半分——。これは平成25年度中に全国で殺処分された犬と猫の数(環境省統計)。平成20年の処分数が約28万匹だったことからすると半分以下に減っているとはいえ、今なお全国で年間約13万匹の犬猫が殺処分されている。そういった現実がある中、県動物保護センター(平塚市土屋)では、犬は2013年の3月を最後に、猫は同年の10月を最後に殺処分を行っていない。どのようにして殺処分ゼロを達成し継続しているのか。その影には小さな命を救おうと働く職員の努力、奮闘するボランティアらの姿がある。

 県動物保護センターは横浜、川崎、横須賀、藤沢、相模原以外の県内の犬猫をはじめとする特定の小動物の保護や、動物愛護精神の普及活動などを行う施設だ。現在はおよそ30〜40匹の、飼い主不在や迷子の犬猫が同所に収容されており、元の飼い主や引き取り手を待っている。過去には約2万匹が収容されていたこともあり、それらの多くは殺処分の対象となってきた。しかし現在は入所数より出所数が上回る状況が続いており、収容された犬猫の殺処分ゼロが1年以上継続している。とはいえこれは収容期限の5日を超える個体を収容し続けたり、時には自宅で一時預かりしたりといった職員の密かな努力に支えられたもの。加えて業務課長の秋山雅彦さんは「センターの取り組み以上に、ボランティアさんの努力による部分が大きい」と話す。現在センターには23の団体と19の個人が譲渡ボランティアとして登録されている。だが「無理をしている部分がある。これでは一過性のゼロになってしまう可能性もある」と危惧している。
ボランティアの取り組み
 そんなボランティア団体のひとつ「里親を探す会SHONAN」では現在、27人の会員が収容期限を超えた犬の引き取り、譲渡会の開催などの活動を行っている。これらは文字通りのボランティアであり、報酬はない。会の運営の為にメンバーは手作り品の販売や募金などで運営費を捻出している。それでも一部は会員の持ち出しがあるという。そこまでする理由はどこにあるのか。トリマーを仕事にする傍ら、里親や一時預かりとして5匹の犬の面倒をみている同会役員の岡本さと子さんは「私の場合は現状を見たら後に引けなくなったという感じ」と話す。「犬猫が殺処分されていることは知っていたけれど積極的に知ろうとしなかった。でもひょんなことから関わりを持つようになると、中にはただ犬が好きというだけで必死に活動している人もいる。犬猫を取り巻く悲惨な現実を目の当たりにした時に『仕事として犬に生かされているのに、あたしは何してるんだろう』って」。もう行動するしかなかった。仕事の合間を縫って犬を引き取り、プライベートの時間を割いて譲渡会の準備に奔走する。結果として殺処分ゼロは達成されているが、あくまで彼女らの厚意に依存した薄氷の上のゼロとも言える。
今求められること
 だからこそ、今後もゼロを継続するのに必要なことは多い。そんな中、2人が共通して話すのは意識の改革だ。岡本さんは「ペットを飼っていない、興味がない人にこそ知ってほしい」と話す。殺処分ゼロに向けた取り組みが全国的に行われている一方、ペットに対する需要は常にあり、供給のために悪質な繁殖が繰り返されたり、劣悪な環境で飼育される個体もいる。「その状況を知ってほしい。国では殺処分ゼロに向けたアクションプランを制定したり、啓発リーフレットなどの制作もしている。でもそれを知っている人がどれだけいるか。多くの人が知ることで、飼い主やブリーダー、販売店などを見る目が変われば」と話す。
 秋山さんはセンター職員という立場から、飼い主の責任を口にする。入所数が減ったとはいえ、今なお飼えなくなった犬や猫をセンターへ持ち込む人は後を絶たない。もちろん、止むに止まれぬ事情があることもある。「ですが引っ越すとか、(犬猫が)病気になって手に余るとかが理由になるでしょうか」。秋山さんは語気を強める。「それでも最後まで共に生きるということが生き物を飼うということだと知ってほしい」と。
 殺処分ゼロという理想の一方、現実的には葛藤もある。秋山さんは「例えば治る見込みのない病気やケガで苦しんでいる、あるいは人間に危害を加える恐れがある、そんな時にどうすべきかは意見が分かれるのではないでしょうか」と話す。岡本さんも「殺処分はゼロにしたいですが、ペットの遺棄や虐待、野良猫への無責任な餌やりなどをなくさないと」と本質的な問題解決を訴える。殺処分ゼロという数字の裏で、現実との隔たりがある。それでも秋山さんはこう話す。「処分する施設から生かす為の施設へと変わっていきたい。まだまだゴールは先なんです」

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