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源平とその周辺 |2014.11.07

源平とその周辺 第2部:第40回 盛長がかつて見た夢(1)

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1107 源平
 宇都宮信房と天野遠景らの功績により、貴海島(きかいがしま)は平定された。頼朝は支配領域を着実に広げていく。かつて、頼朝の忠実な側近である安達盛長が見た、不思議な夢の通りになりつつあった。
 話は頼朝が流人だった頃にさかのぼる。安達盛長の妻の母は、頼朝の乳母(めのと)の比企尼(ひきのあま)である。比企尼というのは、頼朝が伊豆に流された時に自身も武蔵国比企郡(埼玉県内)に下向して、頼朝のことをずっと気にかけ続けてくれていた女性だ。そのような関係で、盛長も長年頼朝を献身的に支え続けてきた。
 山木兼隆に嫁ぐはずだった北条政子が、山木のもとから逃げ出して、頼朝と共に伊豆山(走湯山)権現に庇護されていた時のことだ。頼朝と政子に従って伊豆山に参籠した盛長は、次のような夢を見たという。この夢の話はいくつかの文学作品に掲載されているが、ここでは真名本『曽我物語』を参考にその概要を示そう。
 「今夜、君(頼朝様)にとってめでたい夢を見ました。君が足柄の矢倉嶽においでになった時に、伊保坊(頼朝側近の一品坊昌寛か)が銀の瓶子(へいじ・徳利)を抱き、実近が畳(敷物)を敷き、盛綱が金の折敷(をしき・四角い盆)に銀の盃を据えて、盛長が銀の銚子にお酒をお注ぎしました。そうしたところ、君は三度お酒を召しあがりました。そして箱根に参詣されて、左足で奥州の外の浜(青森県津軽半島)を、右足で西の鬼界が嶋(貴海島)をお踏みになっているのです。そうして左右の袂には月日を宿し、小松三本を挿頭(かざし・髪や冠につける飾り)としてつけて、南に向かってお歩きになっている、という夢でした」
 この盛長の話を聞いて、頼朝は大いに喜んだ。そして、「自分も不思議な夢を見た」と言って、頼朝自身が見た夢について語る。「鳩が二羽飛んできて自分の髻(もとどり・頭の上で束ねた髪)に巣を作り、子を生み育てているという夢である。これは八幡大菩薩が擁護してくださっているということであろう。頼もしい限りであると思われる」。鳩は八幡神の使いと考えられていた(ちなみに鶴岡八幡宮に掲げられている額の「八」の字は二羽の鳩の絵で示される)。続いて、政子も語り始めた。政子もまた、不思議な夢を見たという。
【写真】
鎌倉最古の神社と伝わる甘縄神明神社(鎌倉市長谷1-12-1)の境内に建つ『足達盛長邸址』の碑
著者:新村 衣里子
■プロフィール
お茶の水女子大学大学院博士前期課程修了。元平塚市市民アナウンサー。平成16年ふるさと歴史シンポジウム「虎女と曽我兄弟」でコーディネーターをつとめる。『大磯町史11別編ダイジェスト版おおいその歴史』では中世の一部を担当。成蹊大学非常勤講師。

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