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ヘッドライン |2016.10.28

時を超えて甦る能『伏木曽我』平塚出身の加藤眞悟さんが600年ぶり復曲公演

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 仇討ちの物語として広く知られる曽我物語の中で、平塚に縁のある虎女と曽我十郎祐成の悲恋を描いた能『伏木曽我』が11月26日に行われる「第六回湘南ひらつか能狂言」で600年ぶりに復曲公演される。復曲を手がけるのは平塚市出身の能楽師で重要無形文化財保持者の加藤眞悟さん(58)。準備に1年以上を費やし地元平塚で復曲公演に臨む加藤さんに能の魅力について聞いた。
 そもそも復曲とは何なのか。現在、能の演目は200番程度とされるが過去には何千という演目があったと言われている。『伏木曽我』は何らかの理由で演じられなくなり廃れていったものの1つ。このように廃曲になった演目は当時の謡本(能の台本)が残っていても、現代人には読めない、謡えないものも数多い。それを様々な方向から検証、解読し現代に再現するのが復曲だ。加藤さんは謡の音律の研究をする昭和音大講師、丹羽幸江さんや、中世文学を研究する法政大准教授、伊海孝充さんら様々な人々の協力を得て、復曲能の準備を進めてきた。
 『伏木曽我』とは親の仇討ちを果たすも富士の裾野で果てた曽我祐成の墓所を恋人の虎女が訪ねると、夢の中に祐成が現れ本懐を遂げたことを告げていくという、祐成と虎女の繋がりを描いた作品。加藤さんは観世流シテ方(主人公)能楽師としての立場から復曲に参加し、曽我祐成を演じる。
加藤さんと能
 加藤さんは1958年、松風町の酒屋に生まれた。市内の小中学校を卒業後、伊勢原高校に進学し、高校卒業後には長野のワイナリーに修行にでるが1年後には日本大学に進学。そこでライフワークとなる能に出逢う。「はじめて見たのは『敦盛』だったかな」と加藤さん。その世界観に感銘を受け能楽サークルに所属した加藤さんは在学中から現在の梅若万三郎さんに師事し能の道を歩み始める。「もっとも、親父には怒られましたね。兄がかばってくれました」と笑う。
 加藤さんは2006年に行われた湘南ひらつか能狂言の初回公演から中心人物の1人として関わってきた。そして一昨年行われた第5回公演で平塚ゆかりの能『眞田』を復曲する。「復曲っていうのは研究者からも注目される。能を通して、当時の時代背景が見えてくる」と話す。
能の精神性
 「これは私の考えだけど」と前置きした上で加藤さんはこう話す。「能は武士に好まれたというけれど、それはなぜか。世阿弥の作った能は、死に対して宗教的な解決を説く。武士は人を殺して、輪廻転生で修羅道に落ちる。つまりあの世に行っても人を殺し続けなきゃいけない。でもそれが仏教の教えによって救われる。そういうところに当時の武将たちも拠り所を持ったんじゃないかな。でも今回の『伏木曽我』は恋人の夢物語。当時は廃れたけれど、もしかしたら今の時代にはそっちの方がマッチするかもしれない。そういう期待があるんだよね」
復曲の意義
 「復曲って『労多くして益少なし』なんだよね」と笑う加藤さん。だが「復曲には多くの人の力が必要。縁あって専門家に出会えて、さらに郷土に名曲が埋もれていた。そういう意味で恵まれた環境だった」と話す。「当時の死生観は独特で、平民が武士に殺されても何とも思われない時代。けどその殺された人の親や子にとっては掛け替えのない人の命でしょ。そういう話が能になることで平民でも命の価値が武士に認められたり評価されたりする不思議な世界がある」
 能狂言というと、なんとなしに難解なイメージがあるかもしれない。だが地元の作品に触れることで能の幽玄の世界に対する見方が変わるかもしれない。加藤さんはこう話す。「構図が分かると能はすごく面白い。600年前がどんな時代だったのか。当時の人々の精神に触れて、思いを馳せてほしい」
第六回湘南ひらつか能狂言 復曲能「伏木曽我」
日時:11/26(土)14時開演
会場:平塚市中央公民館
入場料:全席指定S席3,000円、A席2,500円、B席2,000円
問い合わせ:平塚市まちづくり財団☎0463-32-2237

【写真TOP】
一昨年の公演『眞田』で演じる加藤さん
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