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ヘッドライン |2020.10.14

平塚発、世界標準

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日本が世界に誇る企業といえば、トヨタ、ソニー、任天堂……と枚挙にいとまがない。
だが、世界に通用する技術を持つ企業は地元にも存在する。
平塚で培われた熟練の技術と、長きにわたる経験が 世界中で選ばれる製品を生み出し続けている。

 

世界で選ばれる“ケーブル” が生まれる場所 〜日幸カールコード株式会社〜

平塚市の工業団地の一角に位置する日幸カールコード株式会社(東八幡5ー11ー1、篠﨑正勝代表取締役)では、その名のとおりケーブルの加工、特にバネ状になったカールコードの製作を行なっている。現在の主な商材は楽器、特にエレキギター・ベース用のシールドケーブル。多数の国内メーカーのOEMを手がけ、その商品は全世界のプレーヤーの元へ届けられている。

「世の中のケーブルが粗悪品ばかりになったら音楽がつまらなくなる」
日幸カールコード代表取締役 篠﨑正勝さん

 エレキギターなどを弾いたことがない、あるいはバンドにそこまで興味がない人にとっては「ギターにケーブルなんて付いてたっけ?」という縁の下の力持ち的存在がシールドケーブル。バンド経験者にとっては“シールド”という呼び方がなじみ深いだろうか。日幸カールコードは、そのケーブルの国内メーカー23社ものOEMを手がける。有名なのはバンドマンなら一度は手にしたことがあるであろう「プロビデンス」の製品。老舗から新進まで、多くの一流メーカーの製品を世に送り出し続けている。

 同社の創業は1971年。当時は海外ミュージシャンの間でカールコード(バネ状になったケーブル)が流行っていた。代表を務める篠﨑正勝さんは「日本の代理店が、そのカールコードを作れないかという話で。当然、海外製品はあるんだけど、日本人は既にあるものをより高品質に、より低コストにっていうのは得意でしょ」と笑う。さらに今では見かける機会の減った電話機や無線機のケーブルも製造していた。  そうして同社が製造したケーブルはOEM元のメーカーがもつ販路を通じて北米、南米、アジア圏、ヨーロッパ圏など、全世界に届けられる。世界中のミュージシャンの卵が、平塚で生まれた製品を使うこともある、というわけだ。

 「ケーブルって要は銅線で、どれも同じでしょ?」とはいかないのが楽器の世界。同社では関連会社と協力して、メーカーのリクエストに応えて試作も行なう。「銅の純度とか、皮膜の素材とか、プラグのデザインや素材とか、どれかが違うだけで音が大きく変わる」という。無数にあるパーツを組み合わせて、研究開発するのも仕事の1つだ。

 「試作品をプロミュージシャンがテストして、合格となれば一般販売なんだけど、『音がいい』って正解がないでしょ。ある程度万人受けするような感覚が必要になる。100本試作品を作ったら100本とも全然違うサウンドだね。試作品がどんどん市販化されるときもあれば、てんで当たらないこともあるよ」

 著名なプロミュージシャンからはオーダーメイド品の発注も。往年のビッグスターから、今が旬のバンドまで、顧客は幅広い。

 現在、ケーブルがついた世にあふれる製品の多くがワイヤレス化する傾向にあるがそれは楽器も同じ。だが「有線ケーブルがなくなることはないね」とキッパリ。「やっぱり音が違うからね。でも今はコピー品も多い。国産の1/3ぐらいの価格で、見た目は同じでも粗悪なものを販売するケースがほとんど。それを短期間でバーっと売って、いなくなっちゃう」のだという。それが繰り返されれば、業界が衰退していくのは明らかだ。

 「だから、真摯にものづくりをしていくしかない。ケーブルは楽器が音を出す仕組みのなかではわずかな部分だけど、すごく違いが出る。それぞれ違う弾き手が、ギター、アンプ……と、これまた違うものを組み合わせて『理想の音』に近づこうとするわけじゃない?音楽のことはよくわからないけど、安物のケーブルと高級品とで音が違うのはわかる。中国は“世界の工場”というだけあって台頭してきているけど、粗悪な製品も多い。世界で使われているケーブルがそんな粗悪品ばかりになったら絶対に音楽がつまらなくなる。そんなときに『やっぱり日本製だね』と言われるように、頑張りたいね」

 平塚で生まれた製品が、世界の音楽を支えている。

カールコードができるまで

社名にもなっているカールコード。ケーブルをカールさせる理屈はシンプルだが、 高品質な製品を提供するために頼りになるのは蓄積した経験と技術だ。

当然といえば当然だが、素材になるのは真っ直ぐな電線。これはこれで市販されていたとしても違和感のない普通のケーブルだ

ケーブルを心棒に巻きつけていく。均一に、緩みなく巻きつけるには、熟練の技が必要だ。社内でも数人しか行なえないとか

心棒に巻きつけたケーブルを電気釜で熱する。ケーブルの素材や太さに合わせて、10〜15分、120〜150℃の熱を加える

巻きグセがついたケーブルにバネ性をもたせるための作業が「巻き直し」。これをすることで軽やかに伸び縮みするカールコードになる

世界で選ばれる“手仕事”の技

同社の製品は全てハンドメイドで作られる。 手間はかかるが、それこそが高品質なケーブル作りには欠かせない。

ケーブルの皮膜をむき、シールド部を処理する。内部構造は製品によりけりで、ここでの処理が雑だと、音にも影響が出る

プラグにハンダ付けする。人の手が加わる部分ゆえに「慣れるまで相当練習が必要」だという。熟練の技が光る

絶縁体やカバーを取り付けて完成。ケーブルのトラブルは接続部が多い。1つひとつに丁寧な作業が求められる

メーカーごとにパッケージして出荷の時を待つ。工場内には所狭しとさまざまなケーブルが積み上げられている

 

写真:山中基嘉

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