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ヘッドライン |2022.05.25

こんな伝統工法知っていた? 
古くて新しい、自分らしい湘南の家。

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伝統工法で何百年も残る家づくりに挑戦
“石場建て”で地域と、地球につながった。

昔ながらの日本の構造“石場建て”で建てられた珍しい住宅がある。
全国的にみても珍しいが、この家ができたことをきっかけに、改めてそのよさが再確認され広がりを見せようとしている。

 

“石場建て”とは?

石の上に柱が乗っているだけの構造で、寺社仏閣や古い民家などで見られる。現在はコンクリートの基礎を打設し上棟するのが一般的だが、戦前は“石場建て”が一般的だったという。

施主・明石タカフミさん

1981年平塚生まれ。二宮育ち。法政大学デザイン工学部都市環境デザイン工学専攻を修了。法政大学エコ地域デザイン研究所でマップコンシェルジュとして地図製作や都市/建築史の研究を行なう傍ら、地球環境に目を向け“歩いて木を植える”個人活動に取り組む。日本や中国で植樹活動を行なった。現在は、アウトドアメーカーに勤務し、妻と3人の子どもたちと大磯で暮らす

家づくりを通して生まれた
地域貢献と人の循環

一般住宅では珍しい
工法に戸惑いも

 明石さんが家を建てようとしたのはコロナ以前。「家を建てるんだったら“石場建て”にしてみたいと思っていました。学生時代にたまたま読んだ本で知ったんですが、ずっと印象に残っていて。世界に旅をしていろんな家を見て、やっぱりやろうと決意しました。もともと日本にあった素晴らしいもので家づくりができたらいいなと。失われていくのはもったいない」
 だが一般住宅で“石場建て”にするのは珍しく、当然不安もあった。
 「実際に建っているところを見たことがなかったし、もしも棟梁が事故で動けなくなったら、どうなるんだろうとか。しかも途中からコロナ禍もあり、本当にできるのかなと不安ばかりでした。けど、この家なら何百年も残る家になるかもしれない。この家はコンクリートは使っていないことが特徴です。コンクリートには寿命があり、たとえ上物が何百年維持できても土台が持たない。だから石場建ては最強と(笑)。それに金物も使っていないので、錆びて傷んだり、折れたりということもありません。法隆寺なども実際に残っているわけですから。戦後に作られた建築の基準を信じるのでなく、語り継がれて、実際に残っている技術や伝統を信じてみたいと思いました」

ヨイトマケの様子。独特の歌を歌いながらタイミングを合わせて地面を叩く光景は圧巻

50カ所もの礎石。まるで遺跡のよう

穴を掘り、割り栗石を敷き、砂利と砂で空隙を埋める

自然素材を使用して
環境にも配慮

 明石さんの家は、“石場建て”以外にも昔ながらのものがいくつも取り入れられていて、竹小舞土壁もそのひとつ。下地には竹を縦横に組んだ竹小舞が使われており、その竹は明石さんが住む借家の裏山から大家さんの許可を得て、仲間とともに切り出したもの。自分たちで運び、割る作業を繰り返したそう。
 「細かく割った竹を編んでいくのですが、仲間に手伝ってもらって2カ月ほどかかりました。それから土壁を塗り重ねていくのですが、最初の荒壁塗りには多くの職人さんと仲間が参加してくれて2日間で終えることができました。身近にあり、不要とされているものを有効活用すれば、環境に対して負荷が少なくなります。以前読んだ本によれば、土壁は手入れをすれば700〜800年持つと書いてありました。長期的に見て経済的で循環性の高いシステムだと改めて感じました」
 自然にある素材を使い、限りある資源を有効に使っている。竹を使用することで地元の山が荒れるのを防ぐことにつながる。
 「家に使われている建具は古建具を再利用しているんです。建具の寸法に合わせて建物を作っているので少し低いんですけどね(笑)」

竹を麻縄で編んでいく竹小舞。ここに土を塗って壁が完成。壁は竹と麻縄と土でできているとは驚き

使用した竹も自伐。それをコツコツと細く割っていく(写真提供:高橋諒子)

当時の様子が伺えるように、あえて今も土を塗っていない箇所を残している

コミュニティビルド
としての役割に

 さらに、この家の魅力がもうひとつ。それは“地域コミュニティの活性化”という点だ。土壁で竹を編む作業を手伝ってもらうのもそうだが、家づくりをすることで人が集まり、つながりが生まれている。
 “石場建て”の際には“ヨイトマケ”と呼ばれる古くから伝わる作業がある。要となる地固めをする際、昔はご近所さんが集まり、大きな杭を縄でひっぱりながら打ち込んだそうだ。明石さんもそれに倣い、“ヨイトマケ”では多くの協力者が参加した。
 「できるところは友達にもきてもらって自分たちでやる。自分も流れがわかったので、次に誰かがやりたいって言ったら応援できます。昔はそうやっていたのかなって」
 一般的な家よりも完成まで長期間だった家づくりには、これまで、明石さんの友人をはじめ、“石場建て”に興味のある人など、延べ250人もの人たちが作業に参加したという。
 日本伝統の工法を選択した明石さんだが、地球環境に配慮した思いと、家作りを楽しみ、単なる消費行動にしなかったという点は参考にしたいところだ。

玄関や駐車場もコンクリートを使用していない

石場建て。石と柱は接合されていないのも特徴

吹き抜けのリビング中央には大黒柱。金具なども使用していない

木の温もりを感じるリビングとキッチン。冬は薪ストーブ1つで家中暖かい

屋根裏のようで落ち着く、明石さんの仕事スペース。障子窓を開ければ明るい

扉はすべて古建具が使用され、古民家のような雰囲気

杢巧舎

湯河原・鎌倉を拠点とし、伝統工法に強みのある工務店。100年先も感謝される家づくりをと考え、新築はもちろん、古材を使った改築なども得意とする。
足柄下郡湯河原町吉浜2003-1
TEL : 0465-44-4744
http://mokkohsha.jp

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