ニュース｜2023.08.17

新しい出会い、ありますか？
人生を広げるかも「しごたのひらつか」

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写真：イベントへの参加を呼びかける田城さん（右）と猪股さん

　人はライフステージごとにさまざまな出会いがある。地元の仲間、会社の同期や先輩・後輩・上司、パパ友やママ友……これまでに、どれくらいの出会いがあっただろうか。そのうちのどれくらいの人と、親しい友人関係になっただろうか。
　歳を重ねると妙に出会う人を値踏みしてしまったり、自分の仕事に対してプラスなのかマイナスなのか、そんなことにばかり目がいってしまうこともあるかもしれない。

　そういった打算を取り払い、金属加工業の株式会社タシロ取締役・田城功揮さんが仕掛けているイベントが「しごたのひらつか」だ。まちなかベースきちきち（平塚市明石町6−17）でこれまでに３回を開催し、全５回を予定しているという。
　「僕自身、地域企業を経営するなかでいろいろな人とのつながりがありましたが、楽しく働くのにさらなるつながりを求めていました」と田城さん。言ってしまえば「異業種交流イベント」ではあるのだが、田城さんは「できるだけフラットに、“緩い”距離感・関係性にしたかった」という。自身もさまざまな異業種交流イベントに顔を出してきた。とはいえ、どうしても会社や所属ありきの息苦しさを感じていたため、そういった要素を極力排した集まりを自分で立ち上げた。
　イベント名は「しごと（もしごと以外も）＋たのしく」から「しごたのひらつか」。“仕事”とはいえど名刺交換の義務があるわけではない。もっと気軽に知り合い、結果的に仕事につながったらそれはそれで、というスタンスだ。藤沢から真鶴ぐらいの湘南〜西湘地域から、個人事業主や企業家・会社員・公務員などさまざまな属性の参加者が集まっているという。

結構喋りたいことがある

　田城さん自身も30歳と若いが、参加者もまた20代〜30代と若い世代が多い。「そもそもが“何かあった時に声をかけられる関係性”が欲しかったので、結果的に若い人が多いですね」
　「僕は趣味のバスケのつながりも市内にあるんですが、そこは移住者の人もいるんです」。コロナ禍を経て都心からほど近くも土地や物件の値段が安い平塚に越してきた人は少なくない。「話を聞くと移住者には移住者のコミュニティはあるんです。でもそこと地元がつながらない。“しごたの”が地域に入っていくきっかけになっているかなと思います」
　現在イベントでは、メインコンテンツとして毎回違う人を招き、気軽な談話を聞ける形を採っている。その後の交流でマイクを回すと若い参加者も積極的に発言するそうだ。「結構、喋りたいことがあるんだなと感じています。肩書きが外れると話しやすいんでしょうね。個人的にも今は何かの組織・団体に所属していることの重要性は低いかなと思います。イベント１つ企画するにも“これをやろう！“というプロジェクトベースで、より気軽に関わり合える形が増えると面白いかもしれませんね」

きちきちが果たす役割

　会場であるきちきちは、平塚まちなか活性化隊（平塚まち活）の活動から生まれたコミュニティスペースだ。田城さんはイベントを立ち上げるにあたり、このきちきちを縁に知り合った平塚市役所職員の小野力さんと平塚信用金庫の猪股裕さんにも協力を求めた。「二人ともこの手のイベントに長けてるんですよ」と笑う。
　「しごたの」に限らず、さまざまなイベントが行なわれているきちきちも、当初はなかなか人を呼ぶためのイベント集めに苦戦した。だが今では「仕事帰りに10分だけ寄ってくれる人がいたりとか、なんとなく行ける場所になりつつあるかなと思います。この場所がハブになっている感じはすごくありますね」と田城さん。きちきちで生まれたつながりがまた新たなつながりを生むなど、相乗効果が生まれスポットとしての価値が上がりつつある。

つながりを外へ、そして深く

　「僕としては、このイベントを全県単位に広げつつ、その参加者が各市町では独自のイベントに参加したり、あるいは立ち上げたりという流れができたらなと思っています。地域で仕事をすると、自治体を超える横のネットワークが広がっていることの重要性を感じます。一方で、自分の住むまちでは深く関わることでまた仕事や生活が楽しくなるかなと」。そこで９月１日の第５回で平塚でのイベントはひと段落とし、早くも今年中に神奈川版の“しごたの“を画策しているという。
　「参加者と話してみると“知り合いの知り合い”みたいなことはしょっちゅうです。それはこの手のイベントの参加者に“同じ方向性を求めている”人が多いからだと思います。出会いから関係性が形作られ、良い距離感でその輪が広がっていけばもっとまちが面白くなるかなと思います。僕も次のステップに進みたいので、平塚のイベントはバトンタッチできる人がいたらありがたいですね」

　残る“しごたのひらつか”は２回。あまり難しく考えず、ふらっと立ち寄ってみてはどうだろう。「ちょっと違うな」と思えばすっと距離を取ればいい。もしかすると人生を左右する出会いがあるかもしれない。このイベントだけが絶対的な価値があるとまでは言わないが、その先には大きな可能性が広がっている。