2023-24 湘南ベルマーレPRESS OFF THE PITCH No.02
湘南ベルマーレユースからU-17代表に選出　小杉啓太選手・本多康太郎選手が見た「世界」

ベルマーレのアカデミーから今年、２人の若武者が世界に挑んだ。
小杉啓太選手と本多康太郎選手は昨年インドネシアで開催された「FIFA U-17ワールドカップ」の代表に選出。W杯は言わずもがな、世界最高峰となる舞台だが、それはU-17も同じ。U-17代表はベスト16で惜しくも敗退したが、湘南のDFコンビは全４試合にフル出場。小杉選手はキャプテンとしてチームを率いた。

小杉 啓太

　兄の影響で幼稚園年長のときにサッカーを始めた小杉選手。小学校高学年のころに強化特待に選ばれ、ジュニアユース（中学年代）、ユース（高校年代）とステップアップ、U-17アジアカップ予選で代表のピッチに立った。

　「１試合の重みと成長が普段とは違う」という代表戦だが、今回のW杯ではベスト16でスペインの前に散った。「手の届かない相手ではないですが、レベルは１〜２段階違う。次は勝てる自信もありますが、次がない難しさも感じます」。予選で戦ったポーランド・アルゼンチン・セネガルもそれぞれカラーが違った。「組織的な欧州サッカーが色濃いポーランドに対して、個々の能力を生かすセネガル、アルゼンチンは組織の中の個という感じでした」。自身のプレーは通用する時としない時があった。「誰にも負けない“武器”をまだ持ってないんだなと。世界基準での自分の現在地がわかりました」と語り、さらなる高みを見据える。

　淡々と話す小杉選手だが、じつは相当な負けず嫌い。大舞台でも緊張とは程遠く「試合前は昂るというか……これも緊張ですかね？　でも試合が始まると落ち着きます」とさらりと言う。将来の目標はもちろんＡ代表。「その前にU-20や五輪もあります。かなり狭い門ですが、努力をして選ばれる。その自信もあります」

本多康太郎

　ジジの愛称で親しまれ、アカデミー内でも憧れの選手に名前が上がることも多い本多選手。ちなみに「ジャイアントゴリラ」→「GG」→ブラジル風に「ジジ」となったとか。湘南のアカデミーで過ごすなかで、年代別代表戦に初出場したのは高校１年生15歳のころだ。ホーム最終節セレモニーで「W杯の借りはW杯でしか返せない」と堂々と語ったように陽気な性格だが、小さい頃は気が優しく泣き虫だったという。

　身長187cmと体格にも恵まれ１対１の守備に自信をもつが、W杯では「自分のストロングだと思っていたものが通用しない場面が多かった」と振り返り、「世界レベルのフォワードを相手にして自分のストロングを確固たるものにする」とさらなる飛躍に闘志を燃やしている。それでも「今の自分の120%を出すことはできた」と胸を張る。

　W杯前には学校の友人や先生が寄せ書きをしたハチマキを贈られた。そんな周りの応援を力に変え、「アグレッシブに走り闘う湘南スタイルが日本のためになる」と強く信じている。ユースとしての活動はあと１年。チームとしてはプリンスリーグ昇格を目指す。その先には「（イングランド）プレミアリーグでプレーして、“世界の壁”と呼ばれる選手になる」ことを思い描いている。

２人を育てたアカデミー

太田隆一　アカデミーダイレクター

　２人が声をそろえるのが、湘南ユースは「選手の自主性を尊重する」チームということ。小杉選手は「上下関係が厳しいチームもあると聞きます。湘南もゆるいわけではないですが、お互いの考えをきちんと伝え合う土壌ができている」という。本多選手も「選手一人一人に考える力がある」と同意する。

　アカデミーダイレクターの太田隆一さんは「いわゆる“湘南スタイル”がトップチームからアカデミーまで貫かれている」という。クラブはそれを「攻撃的で、走る意欲に満ちあふれた、アグレッシブで痛快なサッカー」と標榜するが、それは湘南にとって目指すべき姿であると同時に立ち返る場所でもある。

　そしてスタイルはプレーに限ったことではない。

　「よく言うのが『そこにあるゴミを拾える人間に』ということです。プロで長く活躍できる人は、プレイヤーとして一流なのはもちろん、人間としても一流です。理想は『湘南のアカデミー出身なら人間性は間違いないね』と言ってもらいたい。そんな育成をしっかりとブレずに長くやってきました」と自負する。

　その意味で、もちろん小杉選手・本多選手はお墨付き。
　馬入のピッチから、今や世界最高峰リーグで活躍する遠藤 航選手のような人物も輩出した。彼ら２人もまた、河川敷から世界を目指している。