激闘を終えたフクダ電子アリーナのアウエーゴール裏全体から自然と巻き起こる大きな拍手。引き分けの試合でこれだけの拍手が起きたその意味は、昇格候補である千葉から敵地で勝ち点1をもぎとった結果に対しての賞賛というより、ベルマーレが貫く「最後まで勝ちにこだわり、走り抜く」スタイルが湘南サポーターにとって、どんな相手に対しても誇れるものになっていることを証明したものだった。ストロングポイントを出し合い、両指揮官共に妥当な結果と感じたゲームに対し、両サポーターの反応が異なったのは、ピッチで繰り広げられるゲームスタイルに対するサポーターからの信頼感の差ではないだろうか?
今年の湘南が一味違うと言われるのは、自分らしさを発揮するために真正面からぶつかっていくという「潔さ」から生まれている。チャレンジするためのリスクを背負って失敗することをこのチームは厭わない。失敗から学び、成長できるからである。その姿は見ている観客に対して勇気をもたらし、日常の活力へとカタチを変える。人間としてズルなしに生きていきたいという理想に強く働きかける「潔さ」は実に痛快で、その感覚が信頼感を生んでいるのである。曺監督の「プロ選手は自分の力を上げないと正直メシを食えないですから」という選手への親心のようなコメントもチャレンジ、失敗、成長のプロセスを求めるがゆえの表現であり、「それは僕も含めて」とその後に付け加える誠実さが信頼される理由だ。
これで全チームとの1巡目を闘い終え、次節からは2巡目が始まる。終盤になるにつれ、増えるであろう今節のような激闘を、潔く真正面からぶつかって勝ちきれるよう成長したその先に、もう一度挑戦できる舞台が待っている。
本紙 濵田拓郎