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源平とその周辺 |2013.09.06

源平とその周辺:第61回 源平双方の作戦

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0906 源平 平家方の阿波重能が、裏切った。息子の田口(田内)教能は、伊勢義盛に謀られて源氏の捕虜となっている。「もう一度、我が子に会いたい――」との思いで、重能は赤い旗を切り捨てた。つまり源氏方へ寝返ったのだ。さらに平家にとって悪いことに、重能は平家方の重要な計略を源氏方に暴露してしまったようなのだ。計略とは、こうだ。源氏を欺くために身分の低い者を貴人用の唐船(中国風の船)に、反対に身分の高い者を兵船に乗せる。源氏が貴人たちの船だと思って唐船を攻めたところで、周りを兵船が取り囲んで攻撃するという作戦だ。しかし平家の目論見は、もろくも崩れ去った。策略を知った源氏が、唐船には目もくれずに一斉に兵船に攻め寄せたのだ。「だから、重能めを早々に斬り捨てておくべきだと言ったのに……」と悔しがる知盛。しかし悔やんでも、今さらどうにもならなかった。そのうちに、平家一門を見限って離反する四国や九州の兵たちの船も出てきた。
ちなみにこの返り忠(主君に背いて敵に力をかすこと)をした阿波重能。源平合戦が終わって、のちに鎌倉に連行されたときのこと。重能の処遇について、御家人たちによって「斬るべきか、容赦すべきか」との評定が行われた。御家人たちが「先祖代々の主を裏切って滅ぼした無法者をどうして赦すことができようか」と口々に言ったので斬罪と決定した。ところが、重能が数々の暴言を吐いたために御家人たちの心証が悪化。重能は籠に押し込められて、火であぶり殺されたという(延慶本『平家物語』)。
さて、壇ノ浦では次々と源氏軍が平家の船に乗り移っていく。潮の流れもいまや源氏の味方だ。平家を追う側となった兵たちの士気も高い。源氏は、船頭や水夫までも容赦なく射殺し、斬りふせていく。武装していない彼らが、ばたばたと倒れる。非戦闘員を殺されるという掟破りの攻撃にあった平家の船は、方向を見失って海上を漂う。
義経指揮下の攻撃は、いつだって予測不可能だ。手段を選ばず、平家を追いつめていく。だが、義経は覚えていたか。鎌倉の頼朝から「三種の神器だけは確実に手に入れよ」、と厳しく命じられていたことを。
【写真】壇ノ浦に面するみもすそ川公園内に建つ『壇の浦古戦場址』の碑(山口県下関市みもすそ川町)写真提供=下関市
著者:新村 衣里子
■プロフィール
お茶の水女子大学大学院博士前期課程修了。元平塚市市民アナウンサー。平成16年ふるさと歴史シンポジウム「虎女と曽我兄弟」でコーディネーターをつとめる。『大磯町史11別編ダイジェスト版おおいその歴史』では中世の一部を担当。成蹊大学非常勤講師。

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