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ヘッドライン |2013.11.08

伝統受け継ぐ「干支だるま」だるま職人 荒井星冠(せいかん)さん

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 年末年始の市で威勢よく売り出される七転八起の縁起物、だるま。県が選定する「かながわの名産100選」や、市が認定する「湘南ひらつか名産品」にも名を連ねる「相州達磨(だるま)」は、平塚を生産地とする神奈川の伝統的な工芸品である。明治時代、多摩地方から大野村四之宮へと製法が伝えられたことから始まり、最盛期には、県内に10軒以上のだるま屋があったという。時代の流れでその数は減り、今や県内に残るのは平塚市内に所在する3軒のみ。そんな平塚に、150年余りの伝統を継承しつつも、師走が迫るこの時期になると毎年、干支にちなんだ創作だるまを発表し、制作に汗を流しているだるま職人がいる。
 10年前、「申」の「干支だるま」を世に送り出して以降、毎年新作を作り続けている荒井星冠さん(58)は、荒井だるま屋(平塚市東八幡)の4代目。創業150余年という老舗ではあるが、伝統的な相州だるま以外にも様々な創作だるまが制作されている。中でも干支だるまは人気が高く、毎年売り切れるという。11年目を迎える今回は「午」であり、来年に制作する「未」で十二支全てが揃うことになる。「最初の頃は、これほど人気が出るとは思いませんでした」と荒井さんは振り返る。
伝統を受け継ぐ
 干支だるまの発想が生まれたのは、自身が4代目として店を継ぎ始めた頃のこと。だるま作りは、子どものときから家を手伝っていたため知ってはいたが、そもそもだるま屋という家業を継ぐつもりはなかったという。平塚市ゆかりの書家・田中真州(1892-1992)に師事していた荒井さんは、大学卒業後、書の指導や個展、日本酒ラベルの書など、書家としての人生を歩んでいた。「3代目である父の代の頃から廃業する店は増え、業界の落ち目を感じ取っており、『何とかしなければ』との想いはありました」。3代目は「潰れたら潰れたでいいよ」と言ってくれたというが、荒井さんには「伝統を守る」という強い意志があった。
革新的な創作だるま
 「ただし、伝統を守るだけではちょっとつまらないな……と。伝統は大切ですが、生活様式は昔と変わり、大きなだるまを飾るスペースがない家も増えました。今の時代に受け入れられる『だるま』を」と、様々な創作だるまを考案し、制作した。こうした中で誕生した干支だるま。口コミで広がり、新聞やテレビで紹介されては毎年売り切れるほどに。気付けば干支が1周するまであとひとつ、というところまで辿り着いた。「よくお客様から『大変ですね』と言われますが、楽しいんですよ。嫌だったらやめちゃいますから」と笑顔。「嬉しいのは、『合格しました』とか『無事に産まれました』と喜んでもらえること。お互いに『ありがとう』が生まれる。商売ってそういうものじゃないでしょうか」
そして伝統へ
 柔軟に変えられるものもあれば、揺るぎなく続く意志もある。「うちで代々受け継がれてきた教えは『利益を先に考えてはいけない。まずはお客様に喜んでもらえるものを作りなさい。お金は後で付いてくるから』ということ。それには『ひとつひとつ手作りで作ること』が必要だと思っています」と力強く語る。
 伝統を守りつつ革新を求め、新作だるまを生み続ける職人がいる老舗、荒井だるま屋。根底に流れる精神は、この先も変わることはない。そして革新から生まれた「干支だるま」は、もはやこの店の伝統となりつつある。
 干支だるまは1つ2,500円。問い合わせは荒井だるま屋(平塚市東八幡4-11-22)☎21-6096。
【写真左から】午だるまを制作する荒井星冠さん(左)と次男の世藍(せらん)さん/申から始まる歴
代の干支だるま/工房も兼ねる店内には数多くの創作だるまが並ぶ

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