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ヘッドライン |2013.12.06

二宮の戦争遺跡を訪ねる戦時下の二宮を記録する会

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 今から72年前の1941年12月8日、日本陸軍によるマレー作戦と日本海軍航空隊による真珠湾攻撃によって太平洋戦争は開戦した。1945年、日本の敗戦に傾きつつあった戦争末期、日本は本土決戦に備え太平洋側沿岸の丘陵地などに陣地や壕を構築した。二宮町もその例外ではなく、吾妻山を始めとした町内各地に洞窟陣地などの戦争遺跡が残る。1月には菜の花が咲く美しい景勝地にも残る、戦争の記憶を辿る。
 こういった洞窟陣地の調査活動を2006年11月から3年半にわたり行ってきたのが「戦時下の二宮を記録する会(赤羽興三郎代表)」だ。会では戦争の記憶を後世に伝えるべく、戦争体験者への聞き取りや関連資料の調査を実施し、会報誌「ひとしずく」で活動報告をしていた。ある時、戦争遺跡を訪ね歩いていた青年に「二宮にある洞窟陣地の調査を一緒にしてほしい」と請われ、洞窟陣地の実地調査を始める。古くからの住人に話を聞き、文字通り道なき道を行き、53回にわたる調査の末に大小合わせて93カ所の陣地や壕を町内各地に発見した。昨年、これら全てを写真におさめ、簡易測量法で実測し記録に残したものを「ひとしずく第五号『二宮の洞窟陣地』」として出版した。
文化賞に入選
 公的な援助も、企業のスポンサーもない。活動は全てボランティア。当然、本は自費出版だ。A4版フルカラー、204ページもの調査記録は手弁当と自前のイベントの収益、その他個人からの出資で全てがまかなわれた。その調査書が今年、地域文化・個人誌・小説など7部門、642点の応募があった「第16回日本自費出版文化賞」(社団法人日本グラフィックサービス工業会主催・NPO法人日本自費出版ネットワーク主管)の地域文化部門で入選に選ばれた。「本当は大賞が良いに決まってるけど自分たちの活動が評価されたという意味で嬉しいには違いないね」とメンバーは笑顔を見せる。
次世代へ
 数ある遺跡の中から吾妻山に残る洞窟陣地を実際に案内してもらった。遊歩道から逸れ、藪の中を5分程行くと倒木の向こうに洞窟の入口が顔を見せた。山を東西に貫通する洞窟内部は僅かに空気の流れが感じられる。「証言から判断するに、洞窟の東側の延長線上、平塚〜茅ヶ崎沿岸に上陸する敵を大砲で迎撃するための陣地でしょう」。ほんの数十メートル上の山頂には富士山を眺める観光客がいる。平和な現代社会のすぐ隣に、生々しい戦禍の跡が残っている。
 戦後68年、当時を知る人はそう多くない。会でも「本を出版して新たに話を聞けたりもするが、次世代に伝える手段や機会が減っている」と話す。会では本の内容をデータ化し地域に残そうとしているが、活動の後継者がいるとは言い難い。全国的にも各地で調査活動は行われているが、大きなうねりにはなっていないという。
 今や戦争は多くの人にとって過去の「歴史」になりつつある。戦争の記憶を体験する機会が失われる時がもうそこまで迫っている。
ひとしずく第五号「二宮の洞窟陣地」
頒価:1,500円(送料別)
取り扱い:伊勢治書店二宮店・吉田屋・出口書店ほか
問い合わせ:吉成泰子さん(戦時下の二宮を記録する会)☎73-1181
【写真】口を開ける吾妻山東陣地・天井に腐食したフックなどが残る ・入選に笑顔を見せるメンバー

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