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ヘッドライン |2023.02.15

複合型スタジアムがこのまちの未来を創る

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湘南ベルマーレは1月14日、新体制発表会のなかで新スタジアム建設を目指す道筋を示した。
公式に候補地や今後の動きを明かすなど、一歩踏み込んだ本気度をうかがわせた。
「どうせサッカーの試合にだけ使われるものでしょ?」というのは少し違う。
このまちの、新たなランドマークとなる可能性を秘めたスタジアム建設の現在地を追った。

 

 湘南ベルマーレのホームスタジアムといえば、平塚競技場=レモンガススタジアム平塚だ。Jリーグ昇格から30年、長年慣れ親しんだスタジアムに愛着があるファンも多いと思うが、なぜ新スタジアムが求められているのだろうか。
 じつはこのスタジアム、「Jリーグクラブライセンス制度」の要件を一部満たしていない
 同制度は2013年から実施しているプロクラブの資格制度で、J1リーグに属するベルマーレは「J1ライセンス」に適合する必要がある。基準はAからCの3等級に分かれており、上から「無条件に必須とされる基準」「達成しなかった場合に処分が科せられた上でライセンスが交付される基準」「推奨される基準」となっている。
 ベルマーレは諸々ある基準のうち、施設基準の一部を満たしていない。それがスタジアムの「屋根のカバー率不足」。要件では「観客席の3分の1以上(B等級)または観客席すべて(C等級)を覆う屋根を備えること」とある。現スタジアムはメインスタンドの一部にしか屋根がなく、Jリーグから制裁を受け続けている状況だ。また、1万5000人という要件ギリギリの収容人数、施設の老朽化……1987年に建てられたスタジアムは、遅かれ早かれ大規模リニューアルが待たれる状態なのだ。
 「ついこのあいだまでJ1とJ2を行ったり来たりしてたベルマーレにスタジアムなんて……」と思う人もいるかもしれない。
 しかしプロサッカークラブである以上、当然リーグ制覇、その先を夢見て、一歩一歩前進している。さまざまなチームの力のなかで、スタジアムの魅力はもはや無視しては通れない大きな要素になっている。
 とはいえ、サッカーのためだけにスタジアムを建てる難しさもある。では、スタジアムがあることで、いかに街が豊かになるか。スタジアム建設とその後の管理・運営を目指す新会社、株式会社湘南メディアスタジアムの佐藤倫明社長に話を聞いた。

話を聞いた人

湘南メディアスタジアム
佐藤倫明社長

ソニー株式会社出身。関連の映像制作会社の代表を務め、スタジアムとエンタメを掛け合わせたプロジェクトを進めるにあたり白羽の矢が立った。本人もベルマーレの熱烈なサポーターで、2011年に藤沢サポーター会を立ち上げた。

 

ーこれまでの経緯をおさらいしてもらえますか?
 スタジアム建設を目指すにあたり、2017年1月に「湘南スタジアム研究会」という組織がゼロベースでの検討を始めました。さらに2019年4月にはこの研究会を母体に「一般社団法人湘南グリーンスタジアム」が立ち上がります。平たく言うと、どこにスタジアムがあるといいかを自由に議論する会です。私有地も検討候補に加えていたのでその全てを公表はできませんが、ここは民家が多すぎる、ここは道路のアクセスが悪い、そんな話を続けていきました。同時に「採算を考えるとサッカー、あるいは球技だけではダメだ」という話にも行き着きました。
 そこで可能性を見出したのが、多機能複合型のスタジアムです。

ー多機能複合型とは具体的にどんなものですか?
 アメリカのロサンゼルスやヒューストン、テキサスなどで最近作られたスタジアムは、球技場でありながら、コンサートの舞台設営を前提に作られたという特長があります。サッカーのシーズン中でもコンサートで使用できる程です。
 ヨーロッパなどでも、スタジアムに商業施設やコンサートホール、ホテルなどが併設されたスタジアムが主流になりつつあります。
この先、日本で建てられるスタジアムも、複合型がスタンダードになっていくはずです。

ー現在はどういった状況でしょうか?
 グリーンスタジアムでは、最終的に候補地を3つに絞りました。そして、建設を本気で目指すため、具体的な交渉に移るために、私が代表を務める湘南メディアスタジアムが設立されました。しかし3カ所の候補地はそれぞれ行政区分が違う。こんな大事なことを同時にお話しするのはあまりに失礼なので交渉の優先順位を決め、グリーンスタジアムから私たちに答申がありました。
 第一候補は平塚市。総合公園とその近隣のエリアです。と同時に交渉の期限を約6カ月としました。建設を決定するまでではなく、建設に向かって動き出す下地を作る期限、ですが。

ーどんな要素の複合型にするビジョンですか?
 サッカーを中心とした球技場、コンサート開催を軸としたエンタメ、そのほかに平塚市ならではの2つの主な要素を考えています。それが「防災拠点」と「平和教育」です。
 総合公園は災害時の総合防災基地となりますから、その機能を時代に合わせて拡充していきたい。
 そして今、子どもたちの笑い声が響く公園は、かつての海軍火薬厰があった土地で、戦火に見舞われた。平塚が誇る七夕まつりはそんな戦災からの復興の第一歩です。そういった記憶を後の世代に伝える場所であってほしいとも考えています。

ー新スタジアムの規模はどれくらいを想定していますか?
 座席数で2万2000席を目指しています。試合やイベントがない日でも、交流拠点として人が集まれるような場所にしたいですね。

ー建設予算についてはどう考えていますか?
 当初、今あるスタジアムを建て替えるとすると100億円以上かかるという試算でした。しかし100億円規模のスタジアムを税金だけで建てましょうという時代でもないですから、投資家を募って民間の力を活用したいと考えています。建設募金団体が資金調達し、建設後に市に寄付したという吹田スタジアムのように、最大限民活方式で進めるつもりですが、行政の協力はもちろん不可欠です。

ーここにきてスタジアム建設を急ぐ理由はなんでしょう?
 ベルマーレは昨年「ターゲット35」という35億円規模の経営になることでシャーレ(J1優勝)に手が届く、という計画を発表しました。年間収入の重要な要素として入場者収入があるのですが、J1の平均が年間9億3000万円ほどなんです。しかし湘南はコロナ禍前の最も人が入っていた年でも4億円ちょっと、平均と5億の差がありました。これは機会損失です。
 また、そう遠くない未来、スタジアムのライセンス要件が厳しくなる見込みです。湘南のホームタウン人口は200万人あまり。1万5000人の現スタジアムは収容人数の基準を満たさない可能性があります。ただでさえ、屋根のカバー率不足で毎年制裁を受けている。ただ新しいスタジアムがほしいわけではなく、J1ライセンスを落とす可能性がある。仮にスムーズに建設が決まっても、実際に落成するまでは数年かかる。まったなしの状況なんです。

ー今後はどのように動いていくのでしょうか?
 平塚が第一候補に上がったことはすでに市長にご報告し「検討を必ずする」と言っていただいています。より具体的なビジョンを描くには市の協力や助言が不可欠です。スポーツ、エンタメ、防災、教育に加え、もしかすると他の要素も盛り込むことができるかもしれない。関連部署と密に連携し、協議を重ねていきたいです。
 そして何より「スタジアムを平塚に」という民意が必要です。どうしてもスタジアムと言うとサッカーのため、ベルマーレのためにと聞こえるかもしれませんがそれだけではない。このまちの、この地域の新たなランドマークになると確信していますから、ぜひ1人でも多くの皆さんに声を上げていただきたいです。

 落合克宏平塚市長は4月の統一地方選に向け、「ベルマーレが主体となった民間主導の専用スタジアム構想を支援したい」としている。もちろん、市の財源=税金でスタジアムを建てることには賛否があるはずだが、スポーツ振興くじ(toto)助成金(最大30億)や、個人・企業版ふるさと納税を活用することも可能だ。
 平塚とベルマーレの関係は前身のフジタ工業サッカー部の時代にまでさかのぼる。今でこそベルマーレのホームタウンは広がったが、それでも平塚は特別な場所のはずだ。そして平塚にとっても、ベルマーレは特別な存在だ。
 ベルマーレはプロチームとして着実に歩みを進めている。今、平塚との交渉が不調に終われば、次の手を考えなければならない。そして一度出て行ってしまえば、二度と戻ってくることはない。
 声を上げるのは“今”なのだ。

トップ画像提供:湘南メディアスタジアム 作成:株式会社梓設計

 

新スタジアム構想4つの
ポイントをチェック!

Point1
日本初の劇場型スタジアム

画像提供:湘南メディアスタジアム 作成:株式会社梓設計

ライブイベントの開催を前提としたスタジアムは「日本初」のはずです。2万2,000人収容のスタジアムは、コンサートなら約2万6,000人のお客さまを呼べます。仮に2日間のイベントを年に5回行なったときの経済波及効果は年間250億という試算もあります。交通や宿泊、飲食など、地域経済に大きく貢献できます。そして湘南・西湘エリア初の大規模コンサート会場になりえるんです。

 

Point2
県西防災の新たな拠点

自衛隊も参加する総合公園での防災訓練

Jリーグをはじめ、各スポーツ団体もスタジアムを災害対策や防災拠点として貢献させる考えを持ち始めています。総合公園は広域防災拠点の1つですし、その機能は時代に合わせしっかりアップデートをしていく必要があります。ヘリが発着できたり、自衛隊の駐留地として十分な機能を持たせたりすることで、西湘・県西の防災をより強固にしていくことができます。

 

Point3
平和への願いを伝える場所

総合公園では毎年夏に「平和の夕べ」というイベントも行なわれている

平塚の七夕は、戦災復興と平和への願いをルーツにもちます。平和の象徴であることは、平塚の七夕だけがもつアイデンティティです。私たちの世代ですら戦後生まれですが、平塚の歴史や、まつりのルーツを次世代へと継承する責任があります。スポーツやライブなどの興行で多くの人が感動を共有できるのは、平和であればこそ。子どもたちが将来に希望をもち、夢を見続けられるよう、メッセージを発信する場所にしたいです。

 

Point4
ウェルビーイングの拠点

画像提供:湘南メディアスタジアム 作成:株式会社梓設計

陸上トラックのない、いわゆる球技場は東は三ツ沢(横浜FCホーム)、西は日本平(清水エスパルスホーム)までありません。新スタジアムはサッカーだけでなくラグビー・アメフトといったスポーツの拠点にもなりえます。それ以上に、市民向けのスポーツイベントなどが幅広く行なえるようになることで、年齢や性別を超えたウェルビーイングの拠点になると思っています。

 

商工会議所とサポーター団体がさっそくタッグ
スタジアム建設目指し署名活動をスタート

今年、サッカースタジアム建設促進委員会を立ち上げた平塚商工会議所と、湘南ベルマーレの各地のサポーター団体が横のつながりを深めることを目的に発足した湘南ベルマーレサポーター協議会の2者が2月3日、団体の垣根を超えた『「平塚をシン・スタジアムがある街に」協議会』を発足した。新スタジアムの建設に向け、サポーター団体と経済界がタッグを組んだ。
「シン・スタジアム」には“新”しいのほか、スポーツや文化“振”興、誰もが“親”しめる、観光の“芯”(拠点)となる、未来に“進”むなどのさまざまな思いを込めた。また、平塚「に」スタジアムがあればいいというだけでなく、平塚「を」スタジアムのまちにしてほしいという願いも込めたという。
まずは2月中旬より始まるオンライン署名や、2月22日〜23日に行なわれるひらつか産業FESでの紙署名活動などを通して民意を集め、平塚市長ならびに平塚市議会への提出を目指す。今後は協議会への参加メンバーの裾野を広げ、各種団体や組織と連携しながら、スタジアム建設に向けた第一歩を行政にも訴えたい考えだ。

商工会議所の鳥山副会頭(中左)、鈴木委員長(中右)、長野さん(右)、小林さん(左)。今後の動きやスケジュールを確認しあった

オンライン署名はコチラ(リンクあり)

 

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ここにも注目! 2023シーズンの ベルマーレ!

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